№97-R1.7月号 「利益」の捉え方

利益は概念

企業経営に不可欠な概念に「利益」があります。「キャッシュフロー経営」を推進し、フリーキャッシュフロー(FCF)を潤沢にすることも「ゴーイングコンサーン」を実現するためには重要ですが、そのFCFの源泉は「利益」です。規模の拡大や新たな設備に必要な資金を調達する際にも、提供先に対して最も説得力があるのはやはり「継続的な稼ぐ力(=利益)」ということになります。

小規模企業では株主が経営者となるケースが大部分ですので、資本提供の際には然程問題にはなりませんが、銀行など外部金融(間接金融)での資金調達となれば「収益力」は大きな判断材料です。

その際の「収益性分析」として使用される指標も「ROA(総資本利益率)」や「売上高経常(営業)利益率」、「EBITDAマージン」など「利益」に関わるものが融資の可否に過分に影響しますこのように考えますと、過度な節税は利益を圧縮してしまう要因であり、会社の存続という観点からは明らかに自虐行為です

とは言うものの、利益は「概念」ですので、ここで一概に「利益」と言っても、「売上総利益」なのか「経常利益」なのか、「事業利益」なのかもわかりません。さらに、同族経営であれば「利益」をコントロールすることも容易ですだからこそ経営者には「利益」を正しく把握することが求められます。

利益の判断

商売には常に需給バランスが影響しますので、好不調の波は自助努力とは関係なく訪れるものです。10月からは消費税率も上がります。過当競争が激しい業界において、税込みでの販売単価を上げることができなければ、利益は減少してしまします。値下げをする際にも緻密な計算が必要で、安易に価格設定をするのは危険です。

例えば、売上高8,000万円、変動費6,000万円、固定費1,400万円で営業利益が600万円(差引)の会社があったとします。この会社が次年度、販売価格を10%値下げして販売量を20%上げる計画を立てた場合、営業利益はどのようになるでしょうか? 物価がなかなか上がらない昨今、現状打開のためによく取られがちな戦略です。

実際に計算しますと、売上高は8,000万円×0.9×1.2で8,640万円、変動費が6,000万円×1.2で7,200万円、固定費1,400万円に変化はありませんので、売上高からそれぞれを差し引きますと、次年度計画では何と営業利益がたったの40万円と大幅に減ってしまいます10%の値下げが560万円もの減益をもたらすことを想像できたでしょうか?

感覚的な判断は時に恐ろしい結果をもたらします勝負をかけるタイミングでは世相を見ながら慎重に判断することはもちろん、感度分析を駆使して値決めの精度を上げなければ「利益」は逃げるばかりです

適正な利益

前述のように同族経営では利益のコントロールがある程度可能です。税金を少しでも減らそうと思えば、社長の報酬を増額することや営業の一環と称して接待交際費を多額に使うことなどで「利益」を減らすことも可能です。

しかし、仮に借入金(返済)がなければ、当期純利益≒キャッシュになるため、法人税等の実効税率が低めであれば、給料を増額して社会保険料や所得税等を引かれるより、利益分のキャッシュを会社に蓄えた方が得策ともいえます

私は適正な利益というのは一応目安があると考えています。具体的には、どの業種においても「付加価値(売上総利益)」の20%程度の営業利益が出せていれば、持続可能な「利益」が得られていると捉えて良いでしょう

先程の例では、現状2,000万円の付加価値に対して600万円(≧400万円)の営業利益でしたから、このレベルでしたら申し分なさそうです。

今回は「利益」の捉え方を中心に敢えて数字に触れて説明させていただきました。「稼ぐ力(=利益)」はもちろん良い仕事の結果なのですが、綿密な計画と緻密なシミュレーションを基に数字で把握することができれば経営の精度はさらに向上し、企業体力も一層強化されるはずです。

 

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