№92-H31.2月号 銀行融資の条件を見直す
融資条件の違い
事業をしていると、銀行から資金調達をする機会が多かれ少なかれ訪れます。設備資金や運営に必要な運転資金など使途は様々ですが、多くの企業を訪問させていただく中で同じ額の融資を受けているにもかかわらず、条件が大きく違っていることに気付きます。大部分は地方銀行や信用金庫が貸主という前提ですが、何故ここまで開きがあるのでしょうか?
例えば、会社の業績の好不調が条件に影響することは容易に察しが付くところです。当然ながら、債務超過はもちろん、黒字でも資金繰りが悪い状態であれば、貸す側の立場では回収の可能性が低くなるからです。
次に、信用面では、社歴や返済実績も重要な審査基準になります。創業間もない好業績企業や借入実績のない企業より、長年粛々と返済実績を積み上げてきた企業の方が条件的に優位になることも特に違和感はありません。さらに、どのような業種であるかも重要です。この先有望なのか、中長期的に安定しそうかという観点は特に長期融資では大切な判断材料になります。
つまり、属している業界が成長産業なのか衰退産業なのかということによっても条件は変わるということです。最近では、スルガ銀行の不正融資問題の影響を受け、不動産賃貸業への建築融資の審査が通りにくくなったという声も現場で頻繁に聞くようになりました。
より優位な条件を
「優位な条件」とは、どのような状態を指すのでしょうか? まずは、保証協会融資(マル保融資)かプロパー融資かという基準です。
銀行は貸金が不良債権化するのを最も嫌うため、マル保融資であれば、返済が滞った際には信用保証協会に代位弁済請求を行い、債権を銀行から信用保証協会に移すことができるという理由でマル保融資を勧める傾向にあります。マル保融資は比較的借りやすい反面、信用保証協会に一定の保証料を支払う負担が発生します。また、金利も制度資金以外はやや高めに設定されます。
これに対し、プロパー融資は債務不履行のリスクをすべて銀行が負うという条件にもかかわらず、マル保融資より低い金利が適用されます(現状であれば、1%未満が低金利の目安)。そのため、まずはプロパー融資にステップアップすることが「優位な条件」の指標となります。
次に、経営者保証が解除されているか否かという基準です。以前にも触れましたが、近年では金融庁の方針で「経営者保証のガイドライン」が示され、保証や担保に頼らない融資が推奨されています。しかしながら、経営者保証はほとんど外れていないのが実情で、最悪の場合、債権の回収は経営者個人の財産にまで及んでしまいます。業績が安定し、財務内容が良好であれば、是非、「無保証化」の交渉をすべきです。
その他、不動産担保の解除や資金需要に備えて当座借越枠を設定することも「優位な条件」として検討すべき事項になります。
積極的に交渉する
最近、融資のリアルな実態を目の当たりにしました。その条件は、不動産担保(根抵当)、個人保証、保証協会付、金利2.0%という内容です。この会社は10年以上利益を出し続けており、減価償却費を加えた簡易キャッシュフローになるとさらに申し分ない財務状況です。にもかかわらず、このような状況に置かれているのは何故か?
一つには、長年、地元の銀行の一行支配が続いていることがあります。そして、最も肝心なことは、銀行に交渉をしていないということです。こちらが申し出ることなく、先方から条件を変えることなど余程のことがない限りないでしょう。
銀行と良好な関係を築くには、業績と実績で信用を得て、評価を上げ、最終的にコントロール権をこちらが掌握することです。その過程で、積極的に交渉を重ねることが結果的に双方の利益につながります。そして、企業側も金融に関する知識を身に付けることで、一層、融資取引のフェーズを引き上げることが可能になるはずです。銀行との程良い距離感が会社の成長・存続を左右します。
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