№160-R6.10月号 経営の原理原則
「原理原則」にしたがう
経営者がウェイトを置くべき行動判断の目安として、「原理原則にしたがう」という考え方があります。「原理」とは物事の根本とその仕組みであり、「原則」とは「原理」から導き出される多くの場合に当てはまる決まりです。
「原理」は主として存在や認識に使うのに対し、「原則」は主として人間の活動に関係しています。「原理」がわからなければ「原則」化はできません。人としての日々の行動であれば、「法律を守る」ということも基本的な部分で「原理原則にしたがう」ことになります。
法律のように守らなければ罰則があるようなものであれば強制的に従わざるを得ませんが、多くの場合は考え方とそれに基づく行動規範のようなものであり、単に意識するか否かの問題かもしれません。
「原理原則」は自然と身に付くこともありますが、学ぶことで知識を深めることができ、良い人生を送る確率を高めます。「原理原則」を学ぶとは、昔から多くの人が本質的に正しいとしてきた考え方や行動を多く習得することです。
例えば、『論語』や『菜根譚』などの古典は数百年~数千年にわったって今もなお読み継がれていますし、成功した歴代のリーダーや名経営者の多くがその変わらない英知を参考にしています。
「原理原則」に関する名言
経営には多くの「原理原則」があります。経験上「原理原則」を守れば必ず成功するとは言い切れませんが、「原理原則」を守らなければ失敗する可能性が高まることは間違いありません。
P・F・ドラッカー氏は著書『マネジメント』で「いかに余儀なく見えようとも、またいかに風潮になっていようとも、基本と原則に反するものは、例外なく時を経ず破綻する」と「原理原則」に沿わなければ必ず破綻すると断言していますし、「企業をはじめとするあらゆる組織が社会の機関である。組織が存在するのは、組織それ自体のためではない。社会的な目的を実現し、社会、コミュニティ、個人のニーズを満たすためである。組織は目的ではなく手段である。したがって問題は、その組織は何かではない。その組織は何をなすべきか、あげるべき成果は何かである」と語り、マネジメントの「原理原則」とは、企業は社会と人のニーズを満たすために成果を中心におくことであると主張しています。
また、稲森和夫氏は『京セラフィロソフィを語るⅠ』の中で「京セラでは創業の当初から、すべてのことを原理原則にしたがって判断してきました。会社の経営というものは、筋の通った、道理にあう、世間一般の道徳に反しないものでなければ決してうまくいかず、長続きしないはずです。(中略)組織にしても、財務にしても、利益の配分にしても、本来どうあるべきなのか、ものの本質に基づいて判断していれば、外国においても、また、いまだかつて遭遇したことのない新しい経済状況にあっても、判断を誤ることはありません」と原理原則経営の正当性を述べています。
正しい判断の礎
「原理原則」には例外はありません。物事の本質に適った考え方・生き方ができるようになれば、人生においても経営においても成功への道を大きく踏み外すことはないと考えます。「困ったときには原理原則に戻れ」と言われるように、経営においては「原理原則にしたがう」ことは大変重要です。
特に経営者は何が正しいかという「原理原則」に基づいて、「本質」を考えて判断する習慣を身に付ければ中長期的に事業が上手くいく公算は大きくなるでしょう。
近年は感染症の拡大や自然災害による損失が顕著になってきています。事業が順調であってもハプニングがいつ降りかかるかわからない状況です。日々の活動においても「原理原則にしたがう」ことを意識すれば耐性は強くなっているはずですし、甚大な被害を受けてしまったとしても「原理原則に戻る」という思考になれば早いリカバリーが期待できます。
古典や歴史のある良書をよく読むといくつかの共通点があり、それらの共通点が「経営の原理原則」といえるものです。「お客様第一」や「企業の目的は顧客の創造」、「利益は目的ではなく手段」など、理解はできても徹底することはとても難しいと思います。企業理念やビジョンを念頭に置きつつ、自らは「原理原則」に従って経営判断しているかを問いかけ続けることが成果を出せる会社への近道です。
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