№111-R2.9月号 経済再生に必要こと

経済のしくみを簡潔に記した寓話

今回は初めにネットで見つけた寓話をご紹介します。

「黒海沿岸にある小さな村があった。そこにひとりの旅人がやって来た。旅人は1軒の宿屋に入り、「今日、一晩泊まれる部屋はありますか?」と言って、ポケットから前金を出して支払った後、観光するために宿を出て行った。

宿屋の主人は、近所の肉屋に「ツケ」がたまっていたので、そのお金を持って肉屋へと走り、これまでのツケを支払った。肉屋の主人は、養豚業者に「ツケ」をしていたので、そのお金を持って養豚業者のもとへと走り、これまでのツケを支払った。
養豚業者の主人は、エサ代を支払えていなかったので、そのお金を持って、エサの販売業者のもとに走り、これまでのツケを支払った。エサの販売業者は、ツケで女性と遊んでいたため、そのお金を持って女性のもとへと走り、これまでのツケを支払った。
その女性は、たびたびカモを連れこんだ最初の宿屋にツケがたまっていたので、そのお金を持って宿屋へと走り、これまでのツケを支払った。

すると先程の旅人が戻ってきて、「ほかに見る場所もないから、やっぱり帰ります」と言って、先程支払った前金を返してもらい、村を出ていった。結局、誰もお金を稼いでいないけれど、村の人たちはそれぞれ借金を返すことができた。」

消費の重要性

いかがでしょうか? お金が回るということの重要性が端的に理解できる良い例だと思います。

リーマンショックが金融不況で不動産業や建設業、運輸業を中心に打撃を被ったのに対し、今回のコロナショックは消費不況で飲食業やホテル、観光業、アパレル、小売が壊滅的な被害を受けている状況です。消費が行われなければ、お金は回りません。お金が回らなければ、ツケや借金も返済できず生活が困窮するばかりです。

先月17日内閣府から4月〜6月期の国内総生産(GDP)が発表されましたが、名目が前期比7.4%減、年率換算で26.4%減、実質は前期比7.8%減、年率換算で27.8%減と名目、実質ともに3四半期連続のマイナスとなりました。予想はしていたものの、統計史上例のない過去最大の下げ幅です。

以前にも述べましたが、GDPは付加価値の合計であり、その約6割を個人消費が占めていますその付加価値の合計が給料の原資と考えると、原則的にはGDPが下がれば、給料も下がる仕組みです。

つまり、消費を抑えれば、回りまわって自らの収入減につながってしまいます「金は天下の回り物」と言いますし、老後や危機時に備えての蓄えも大切ですが、「経済を回す」という大局的な考えに立ち、過度に消費を抑えないよう心掛けたいものです。

使わなくてもお金は回る

「老後や危機時に備えて預金をする」ことと「消費する」ことは、ブレーキとアクセルを同時に踏むようなイメージを持つかもしれません。実は、預金する」ことでもお金は回っています銀行は私たちから受け取ったお金を保管しているわけではなく、融資などの形で企業に提供しており、そこで新たな生産活動が生まれているのです。預けたお金は預金の引出用として銀行に一定の準備金が残りますが、それ以外は融資や投資に回り経済成長の原動力になっています(今回は「信用創造」の解説は省略します)。

しかし、例えば、融資を受けた企業がその資金を元手に飲食店を始めたらどうでしょうか? 店舗を借りて、設備や材料を購入するまではお金が流れますが、コロナの影響でお店に来るお客さんがいなければ、そこでお金は回らなくなります。家賃も払えなければ仕入れもできず、取引先にも連鎖するでしょう。最近は給付金や助成金での国の救済策にも限界が見えてきた感があり、需要喚起策の口火を切って「Go To イベントキャンペーン」も始まりました。

油断はできませんが、コロナウイルスの感染も第二波が終息しつつあります。今後は国民が「消費と投資の両方を意識して、経済が活性化するよう「お金を回す」ことが必要です冒頭の寓話が示すように、お金が回れば誰もが不安から解放されます。

 

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