№115-R3.1月号 経営コンサルタント VS 税理士
税理士は経営指導のプロではない
中小企業には多くの場合、顧問税理士が関与しています。法人の場合、個人事業と比べて税務申告が煩雑なことも申告代理を独占業務とする税理士に依頼せざるを得ない理由です。以前は記帳代行や書類の整理なども依頼していましたが、近年では会計ソフトが普及し伝票や現金出納帳を手書きする必要がなくなりました。そのため、自計化を推進する税理士が増え、顧問報酬の対価も記帳代行から資金繰り支援や経営指導に変わりつつあります。
ここで疑問が生じるのですが、果たして税理士はこれらの業務に精通しているのでしょうか? 少なくとも、税理士試験には経営やファイナンスの科目はありませんし、マーケティングや事業再生の知識に関しては素人と然程変わらない印象です。排他的独占業務で会計事務所を運営することを「経営」と勘違いしている方々も少なからずいます。
中小企業庁も経営革新支援機関の認定を中小企業診断士ではなく、税理士にほぼ無条件に与えている実態もとても不思議な現象です。「経営革新を税理士主導で実施する」≒「脳の外科手術を内科医がする」のようなイメージでしょうか?
少々辛口なコメントになりましたが、経営者は税理士が経営の専門家ではなく税務のプロであるということを理解しておく必要があります。
業務の違い
経営コンサルタントは名称だけで判断すると、どうしても胡散臭さが拭えません。そもそも何を生業にしているかも説明が面倒で手間がかかります。業務については、中小企業診断士も曖昧で、「診断?顧問税理士が経営は毎月見てくれているから大丈夫」と活躍の場を狭められている感じです。
中小企業診断士自体も「国が認めている唯一の経営コンサルタント」などとコメントする輩を散見しますが、大手コンサルティングファームのプロコンからすれば嘲笑の対象でしかありません。
では本題の「経営コンサルと税理士の業務の違い」は、具体的にはどういったところなのでしょうか?
まず大前提として、前述の「経営の専門家」と「税務の専門家」という違いがあります。経営も範囲が広いですが、税務も相当なものです。税理士は税法が各税目でほぼ毎年改正されるので、キャッチアップも大変だと思います。
次に目的は経営コンサルが「会社の存続」であるのに対し、税理士は「申告書の提出」でしょうか? その前提であれば、当然経営コンサルは貸借対照表主体の業務になりますし、税金を計算する税理士は損益計算書を重視することがわかります。会計書類という括りでは、管理会計と制度会計(財務会計、税務会計)という区分かもしれません。お客様の要求も本来、経営コンサルに対しては「経営の助言、資金繰りの改善」が主体であり、税理士は「節税や決算書の作成、税務調査への対応など」です。
このように業務で比較すれば十分対等な立場ですが、大きな違いとして実感するのはやはり社会的信用です。
経営コンサルタントの在り方
私が経営コンサルタントを目指したきっかけは、ある税理士が顧問先の経営悪化に対して、「私は税務を依頼されているのであって、経営のことは関係ありません」と平然と語ったことでした。
経営者の多くは顧問税理士を自社の経営を含めた相談相手だと思っています。財務内容を理解し、銀行との交渉窓口にもなり得る税理士に簡単に見放されてしまう現実を目の当たりにして、何とか経営者に寄り添うことができないものかと独自のビジネスモデルを考えました。
税務申告という制度がある以上、税理士を無視することはできませんので強力なパートナーとして賛同が得られる人物と協業することができれば申し分ないところです。
お客様と税理士、経営コンサルタントのエンゲージメント・モデルこそ付加価値を最大限に引き出す「ハイブリッド・スタイル」だと確信しています。
年初に当たりご挨拶のような締めになりますが、今後も他の士業仲間とのネットワークを一層強化し、様々な角度からお客様の発展に貢献すべく進化を続け、経営コンサルタントとして何時も最良のパフォーマンスが発揮できるよう努めて参ります。
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