№118-R3.4月号 経営に役立つフレームワーク<その1>

SWOT分析

日々の業務に追われていると自社の置かれている環境や立ち位置を見失いがちになります。変化の激しい時代においては経営戦略も市場ニーズに対応する必要があり、定期的に自社を見つめ直す機会を作ることが必要ですコロナ禍において急激に変化が進む中、改めて社内外の環境を分析する良い機会でもありますので、今回は簡単なフレームワークをいくつかご紹介します。

まずは有名なSWOT分析です。
自社の置かれた環境を「S」=強み、「W」=弱み、「O」=機会、「T」=脅威の4つの象限に区分し、強みと弱みを内部要因、機会と脅威を外部要因として分析します。この分類により、自社が直面する経営環境をバランス良く俯瞰でき、リソースの整理や再考につなげることができる点が特徴です

さらに、内部要因と外部要因を掛け合わせれば(例:内部要因「S(強み)」×外部要因「O(機会)」)、具体的な戦略や戦術が抽出でき、積極戦略」、「改善戦略」、「差別化戦略」、「防衛・撤退戦略」が明確化することで意思決定の際に説得力を持たせます(クロスSWOT)。

例えば、自社の「S」が「生産性が高い」、「O」が「自社製品の海外ニーズが高まっている」であれば、「積極戦略」で「海外向けに自社製品を生産・販売する」といった具合です。

個人的には「防衛・撤退戦略」の部分には、分析後あまりウェイトは置かないようにしています。

ファイブフォース分析(5つの競争要因)

次に、業界構造の把握に役立つのが、「ファイブフォース・モデル」です
開発者のM・ポーター氏は競争が生じる要素を①既存業者間の敵対関係、②新規参入の脅威、③代替品の脅威、④売り手の交渉力、⑤買い手の交渉力の5つに分類しました。

例えば、自社がランチをメインにする飲食店だったとすると、①は同業の飲食店間の競争、②はUber Eatsなどの台頭による宅配事業、③はコンビニやスーパー等の弁当(中食産業)、④は原材料の高騰、⑤は固定客の値上げ抑制圧力のように自社を中心にポジショニングします。

こちらも実務においては自社を取り巻く勢力が一目瞭然となり、どの部分に注力すべきかが明確に示されるため、競争戦略の設計や競合対策に役立つ優れた分析ツールです。

市場の成熟化や消費者の価値観の多様化などによって、多くの業界で競争が激化し、製品やサービスのライフサイクルが短くなっています。新製品の投入や新ブランド立ち上げの際にも収益性を検討する必要があり、業界の収益構造を知らなくてはなりません。こうした場合にもファイブフォース分析が活用できます。

アンゾフの成長ベクトル

最後は米国の経営学者I・アンゾフ氏が考案した製品」と「市場」の2軸で分類し、企業の成長の方向性を見出す「成長ベクトル(製品・市場マトリックス)」です
2軸を、さらに新規と既存に区分してそれぞれを掛け合わせることで①市場浸透戦略(既存の顧客に既存の製品)、②新製品開発戦略(既存の顧客に新規製品)、③新市場開拓戦略(新規顧客に既存製品)、④多角化戦略(新規顧客に新規製品)の4つの戦略が導かれます。

①はマーケットシェアの拡大で、使用頻度や量の増大、新しい用途の開発、②は新たな属性の追加や製品ラインの拡張、新技術・新製品の導入、③は地域拡張や新セグメントへの拡張、④は新規事業となります。一般的な成長モデルは①→②→③→④ですが、表を描くことで自社の方向性を確認することが重要で、①→④のパターンももちろんアリです。

ただ、多角化戦略はリスクが高いため、既存の事業とシナジーが発揮できる分野を選択することが鍵になります3つのフレームワークに共通することは、自社の現状を図表化し、ポジションを俯瞰した上で戦略を練ることです

盲点になっていたことが発見できたり、思わぬ可能性を見出すことで新たな事業展開のヒントが得られるかもしれません。経営の可視化という意味でもフレームワークを実践的に活用し、自社の事業戦略を定期的に分析してみてはいかがでしょうか?

 

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