№83-H30.5月号 女性が活躍する社会

女性が活躍する企業

最近、政治家や芸能人の差別的発言や女性スキャンダル、ハラスメントのニュースが後を絶ちません。実際の件数が増えているのか、以前は取り上げられることもなく、女性がただ泣き寝入りしていたのかは定かではありませんが、勇気を出して訴える側の気持やその後の生活へ影響を考えると、その心情を察するに余りあるものがあります。

女性の立場はまだまだ不安定ですが、企業においては、女性の管理職比率が高いほど、また、働き方の多様性を進めている職場ほど、総じて業績が良い傾向にあります

『日経ウーマン』の「企業の女性活躍度調査」によりますと、2018年度版「女性が活躍する会社ベスト100」では、1位 ジョンソン・エンド・ジョンソン日本法人グループ、2位 住友生命保険、3位 JTB、4位 パソナグループ、5位 花王グループ、6位 セブン&アイ・ホールディングスとなっており、いずれも有名企業ではありますが、総合点が76点台と高得点をあげています。

育児・介護と仕事の両立支援だけでなく、女性活躍を進める研修や残業時間削減など、ダイバーシティの推進や「働き方改革」に注力する企業が評価されたようです。JTBでは、女性の課長比率が4割に達しており、4月には女性執行役員も配置されています。

「M字カーブ」の解消と専業主婦

女性の活躍に伴って、どうしても懸念されるのが少子化の問題です。出産は女性に限られていることもあり、産前産後のケアや子育てのウェイトは女性に偏る傾向にあります。残念ですが、事業規模や業種によっては、まだまだ採用時に女性を敬遠する企業が存在することも実感しています

日本の合計特殊出生率は1.44で、人口置換率の2.07を下回り、2048年には1億人を下回って9,913万人になるとも推計されています。少子化問題は、未婚者の増加や経済的な問題も大きく、一概に女性の企業での活躍とは結びつくものではありません。女性に限らず、未婚者の増加は憂慮すべき状況なのですが、経済的な理由であれば、共働きで、女性の社会的地位が向上し、保育施設等が充実すれば解消されるはずです。

また、統計的にも、非正規雇用が中心ではありますが、いわゆる「M字カーブ」が「逆U字カーブ」へと移行しており、健康長寿化で60~64歳の労働参加率も54.9%と過去最高になっています

一方で、専業主婦も約38%存在しており、半数(48.31%)程度であった2000年と比較すると、減少傾向にあるものの依然高い水準ですこの層の社会進出が今後の経済成長のカギを握っているという仮説は、以前(2013年2月号)にお伝えした通りです。

起業という選択肢

東京商工リサーチの調査(2015年)によりますと、全国280万社(保有データ)のうち、女性社長は33万2,466人(11.87%)で過去最高に達していますちなみに、愛知県は1万5,974人で、東京、大阪、神奈川に次いで第4位です。

偶然かもしれませんが、総理大臣を含む現閣僚20名のうち、女性が2名(1割で同程度)であることと比較すると、決して多い印象を受けません。やや手前の段階で、女性の起業家と起業希望者の割合(『中小企業白書2017年版』より)では、2012年のデータではありますが、全体に占める女性の起業家が28.8%、起業希望者が33.4%となっています

5年前と比較して、起業家が0.9ポイント、起業希望者が2.8ポイントそれぞれ増加していますが、結論として、近年女性の働き方のひとつとして起業を考えるようになっているものの、実際に起業にまでは至っていないということがわかります。

最近、女性の写真家さんとお話をする機会がありましたが、起業のきっかけは、趣味で写真を撮っていたら、ある時、予想外に需要があることに気付いたとのことでした。起業というと、ハードルが高く感じられますが、社会貢献できそうなスキルと世間の需要が一致すれば、副業や兼業として始めることも選択肢ですどのような形であれ、女性の潜在能力がもっともっと開花する社会にしていかなければなりません。

 

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