№88-H30.10月号 キャッシュレス社会へ加速?

日本と世界の普及率

先回お伝えしました「自動運転技術」の進歩とともに、金融面では「キャッシュレス化」も徐々に国内に浸透してきています。5日の未来投資会議で安倍首相は「キャッシュレスで送金サービスを受けられる社会を実現するため、金融法制の見直しや金融機関との連携促進などを検討する」と述べ、キャッシュレス化実現のための一部規制緩和を含めた改革を示唆しました。

経済産業省のデータでは、日本の「キャッシュレス決済普及率」は2016年で19.8%と諸外国と比較して、現状では決して進んでいるとは言えませんアジアの近隣国では、既に韓国は96.4%、中国でも60%を超えていますし、欧米先進国では、イギリスが68.7%、カナダが56.4%、アメリカ、フランスがそれぞれ46.0%、40.0%といずれも日本の2倍以上の普及率を実現しています。

現状を踏まえ、政府も「2027年6月までにキャッシュレス比率を2倍の40%にする」という到達目標に向けて、いよいよ本腰を入れる様相です。

異なる進展過程

では、何故他の国々ではキャッシュレス化が進んでいるのでしょうか? いくつか理由が考えられますが、まず、中国や韓国ではスマートフォンの急速な普及があります。端末や通信費も安く、その影響で生活の利便性が格段に向上し、モバイル決済が日常的に行われるようになりました。

次に、通貨の信用性がないというのも大きな要因です。偽札の発行が後を絶たず、確実な決済手段としてキャッシュレス化が救世主となったというわけです。

その他には、QRコードの普及で、店舗側が高価な読み取り機を用意しなくても、モバイル決済で完結し、露天商から大型店舗までキャッシュレスが可能になったというのも進展に拍車をかけました。

対して、国内では過程が大きく異なります。普及率の上昇は芳しくありませんが、Amazonや楽天などのオンラインショッピングが台頭し、クレジットカード決済が増えたことやクレジットカード自体の所有率が増え、カード利用に抵抗感がなくなったこと、SuicaやEdyなどの電子マネーを使う人が増えたことなど、その利便性と手軽さが着実に認知されてきています。

今後は、フィンテックの一環で、若年層を中心にLINEペイやトランスファーワイズなどの送金手段でもキャッシュレス化を後押ししそうです。

何故キャッシュレス化を急ぐのか?

キャッシュレス化を急ぐ理由は、単に世界に遅れを取っているという事実だけではありません。慢性的な人手不足への対応策として、生産性を高めることにも効果を発揮するからです。会計、精算や送金などキャッシュを扱う仕事は、神経質になりがちですが、これが省略できればスピードや正確性の向上だけでなく、セキュリティ面においてもコスト減が図れます。

また、近年では、外国人観光客の増加もあり、年間約3,000万人が日本を訪問しています。前述の通り、最も来日が多いアジア人の決済手段がキャッシュレスであれば、対応が遅れている店舗での販売は伸びません

例えば、クレジットカードが使えれば3万円使う予定がキャッシュ(円)は1万円しか持ち合わせていないため買い控えてしまうといった具合です。現金しか使えないことに不満を持つ外国人は4割存在し、2020年に訪日インバウンド旅行者が4,000万人となった場合、約1.2兆円の機会損失が発生するという試算もあります。店舗側もクレジットカード決済を導入しない理由として、約42%が手数料の高さをあげていますので、政府も調整機能として、補助金や税額控除等を利用した普及を推進する方針です。

しかし、先日の北海道胆振東部地震では大規模な停電(ブラックアウト)が起こり、現金しか使えないという事態が発生してしまいました。多くの方々がキャッシュレス化への不安を一様に感じたことでしょう。堅実な国民性もあると思いますが、政府の目標値も10年後で4割程度ですので、「キャッシュレス社会」と呼ばれる時代の到来は、この国では相当先のような気がします。

 

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