№105-R2.3月号 危機時の対応と備え
被害の現状と経営者の不安
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が依然として世界各地で感染拡大しています。昨年12月に中国・湖北省武漢市で最初に発見されて以来、国内でも徐々に感染者数が増え、現在では多方面に甚大な影響を及ぼしている状況です。
特に、先月27日に政府が発表した小・中・高校の臨時休校要請により、社会全体が自粛モードに入り、各事業においても多大な損失を被る深刻な事態に発展しています。
観光減による旅行関連業、宴会等のキャンセルによる飲食業、中国の操業が停止することに伴い部品の供給不足が起こる製造業など突然の大幅減収により、資金繰りが滞り、既に進退に関わる決断を余儀なくされているケースも出ているほどです。
当然ながら、非常時に対する備えとして内部留保を充実させておくことは重要ですが、経営者にとって最大の不安は、現時点でいつ事態が終息するか見当すら付かないという点にあります。この先の収入が見込めないという眼前の現実に対して、当面の資金繰り、雇用の維持、混乱の鎮静化など緊急かつ重要な決断をしなければなりません。
短期的にはリーマンショックさえ上回る経済規模の縮小が起こっていると言っても過言ではありませんが、このような時の姿勢や行動こそ企業家としての真価が問われるものです。
中小企業向け金融施策
現時点で政府が公表している主な救済策は下記の通りです。
①セーフティネット保証(4号、5号):金融機関の融資に対して信用保証協会が「保証」するもので、宿泊業、飲食業など指定40種が対象になります。4号は指定を受けた「地域」の企業が対象で、5号は指定された「業種」の企業が対象です。どちらも融資申請前に市町村の窓口で「認定申請」をする必要があります。
②セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金):日本政策金融公庫が実行する「貸付」制度です。売上の減少や利益の悪化、回収条件の長期化と今後悪影響が見込まれる場合も含めて融資の対象となります。多くの事業者が利用可能です。
③衛生環境激変対策特別貸付:日本政策金融公庫が実行する「旅館業、飲食店営業及び喫茶店営業」向けの「貸付」制度です。「新型コロナウイルス感染症の発生による影響に関する確認資料」のほかに、振興計画の認定を受けた生活衛生同業組合の組合員については、生活衛生同業組合の長が発行する「振興事業に係る資金証明書」が必要となります。
その他にも、雇用調整助成金の要件も緩和され、特例措置で対象が新型コロナウイルス感染症の影響を受ける全事業主に拡大されました。
また、7日には、首相官邸において、「無利子・無担保」の特別融資枠(日本政策金融公庫)の創設も発表があり、5,000億円超が投入される予定です。
非常時への備え
多くの企業が予測することさえできなかった今回の感染症拡大ですが、先日11日には東日本大震災発生から9年目を迎えました。昨年までに各地で起こった大規模な自然災害もまだまだ復旧には程遠い現状です。
被災にかかわらず、これらの災害を教訓にした企業は、速やかにコンティンジェンシープランやBCP(事業継続計画)の作成に着手しています。前者が「どうやって被害を抑えるか」を目的とするのに対し、後者は「いかにして事業を継続するか」を目的とするものです。
いずれも災害や事故などのあらゆるリスクを対象にその対応方法について事前に計画しておくものですので、これを機会に作成しておくことをお勧めします。
そして、何より資金調達及び資金繰りは有事には最大の懸案になります。十分な手許流動性の確保はもちろん、経営者は災害時に備えて自社に資金を充てるための貯蓄も意識すべきでしょう。他人資本は返済負担が生じますので、平常時の個人での蓄えは大変重要です。
最後に実際に被害に遭われている企業関係者の心中を察しますとやり場のない怒りや焦りが伝わってまいります。事態の終結を願いつつ、政府には早急にモラトリアム法クラスの支援策を期待したいものです。
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