№110-R2.8月号 相場の疑問

株価と企業業績

上場企業の四半期決算(4~6月期)が軒並み大幅な赤字と報告される一方で、日経平均株価は依然として2万3千円台を維持しています。日経平均株価とは、東証第一部上場銘柄のうち、取引が活発で流動性の高い225銘柄を、日本経済新聞社が選定し算出した日本の代表的な株価指数です。

通常株価は企業業績と連動しており、企業ごとに業績が好調であれば株価は上がり、不調であれば下がるというのが原則で、当然ながらそれらの平均も同様であると考えられます。今年4月には新型コロナウイルスの感染拡大により、一時は1万8千円を割りましたが、1月程で2万円台を回復しました。

冒頭に記したように最近では過去最悪の赤字幅を記録する企業も多く、大手航空会社や観光業、飲食業などは壊滅的な打撃を受けている状況です。しかし、日経平均株価は安定している…。不思議ではないですか?

この現象の要因として、日本、米国、欧州がそろって大規模な金融緩和に乗り出し、各国の中央銀行が大量に資金供給したことで、株式市場にその資金が流入しているという効果が考えられます国内ではそれ以前から世界最大の機関投資家であるGPIFや日銀の介入もあり、「官製相場」などと揶揄されていました今の株価は、カンフル剤が効いている状態にすぎません政府としては何とかこの間に景気を回復させ、本来の姿に戻したいところでしょう…。

原油相場とガソリン価格

次に、原油価格とガソリン価格の関連はどうでしょうか? こちらも新型コロナウイルスの世界的な感染拡大により、世界各国の経済活動や人的移動が極端に減退した結果、原油価格が暴落し、米国の指標であるWTIが一時1バレル20ドルを切る価格まで下落しました。その後、1バレル40ドル近辺にまで戻していますが、2年程前の1バレル70ドル台を付けていた頃と比較すると、まだかなりの安値水準です。

一方で、8月に入り、ガソリン価格は急上昇しています。8月13日発表の石油製品価格調査結果によると、8月11日(火)時点におけるレギュラーガソリンの店頭現金小売価格の平均は、1リットルあたり135.6円、値上がりは13週連続です。

原油の取引価格は下がっているのに、何故、ガソリン価格は値上がりするのか…石油情報センターによると、今回の大幅な値上がりは、産油国の国営石油会社が、消費国の石油会社に対して7月に設定した「割増金」の影響だそうです。これが、8月第1週向けの石油元売り会社の卸値に反映され、前の週と比べて卸値ベースで一気に4円も上がったとの説明でした。この疑問については、分析を深めたところで、常に「産油国の都合」という結論に至りそうです。

金相場と機軸通貨

金価格も史上最高値を更新しています。昨年同時期には1g当たり5,000円程度で推移していましたが、今月に入り、遂に7,000円を超える急騰ぶりです。500gの金地金に換算すると、僅か1年で100万円も価値が上がった計算になります。

世界的な買い控えで金製品の需要が減っているにもかかわらず、金相場が上昇しているという現象は不思議です。実は、価格を押し上げているのは欧米の投資ファンドによるETF(金を裏付け資産とする上場投資信託)の大量購入で、1~7月の資金流入は491億ドル(5.1兆円)にまで達しましたそうなると、ドルの基軸通貨としての信認が問われることにもなります。

つまり、投資家がドルを金に変えているということになるからです。FRB(米連邦準備理事会)は今回、無制限の量的緩和や危機時のドル確保に追われる各国に対し、ドルスワップの枠組みで最大4500億ドルを供給するなど「マネタリーベース」を5割増やし、流通量を過去最大にすることで一定の信認を確保してきました。

しかし、米10年債利回りは0.5%と過去最低に低下し、金は買われ続けています。金属としても高い価値がある金に対し、紙幣は国が破綻すればただの紙切れです紀元前から金は「富の象徴」であることも歴史が物語っています。

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