№116-R3.2月号 ブランド論(基礎編)

ブランディングのポイント

「ブランド」と聞くと、最初に思い浮かべるのはやはり時計やバッグなど高級ファッション品で、具体的にはロレックスやシャネル、エルメスなど世界的にも著名な企業名でしょうか?
そのような例はもちろんですが、中小企業にとっても「ブランディング」は差別化のためのとても重要な手段です

ブランドとはある特定の商品やサービスが消費者・顧客によって識別されているとき、その商品やサービスを「ブランド」と呼ぶ(一般財団法人 日本ブランド・マネージャー認定協会)と定義され、消費者・顧客が心の中にいだく心象(ブランド・イメージ)と、企業が製品・サービスによって提案したいブランド独自の価値(ブランド・アイデンティティ)を近づけ、一致させる活動(『社員をホンキにさせるブランド構築法』 同文館出版)をブランド構築と呼んでいます。

ここでのポイントは「消費者・顧客が心の中にいだく心象」で、ブランディングはつい企業側の視点になりがちです。提供者を識別してもらう「出所表示機能」や消費者が品質を評価する拠り所となる「品質評価機能」、商品やサービスを認知してもらうための「宣伝広告機能」は当然重要な役割ですが、情報が溢れる時代、最も重視すべきは顧客視点での役割を意識したブランディング、特にユーザーの自己表現と一致する「意味付け機能になります。

ブランディングの成功例

少し理論的になりましたので、ここでブランディングの成功例を2つご紹介します。

最初は近畿大学です。2002年に近大水産研究所が世界で初めてクロマグロの完全養殖に成功したことから、近大マグロは近畿大学の業績の代名詞となっています。
この成果を「近大が掲げる実学教育をわかりやすく伝える最強のコンテンツ」と位置付け、ユーモアを交えたPR活動に専念したことが近大のブランドを確固たるものとし、志願者数を10年間で2倍、7年連続志願者数日本一へと導きました
「マグロ大学って言うてるヤツ、誰や?」や「マグロだけじゃない」などのキャッチコピーを入れながらマグロの写真を際立たせるポスターなどは秀逸なブランディング手法と言えます。

もう一社は、体組成計やヘルスメーターなど健康器具の製造・販売で有名な㈱タニタです。当初目的は社員の健康を守るために高栄養・低カロリーの食事を提供する「社員食堂」として始めたことが一般人も利用可能な「タニタ食堂」の展開や社員食堂向けのレシピ本の販売につながりました。
健康をはかる」という理念が「健康をつくる」ことへの貢献へと変化して、消費者に「タニタのレシピは健康的である」というブランドイメージを抱かせること(ブランド拡張)に成功した事例です。

ブランドは顧客への約束

大学や大手企業の事例をあげましたが、ブランディングは決して大きな資金が必要なものばかりではありませんユニークな商品・サービスを提供することや環境保護への取組み、注意を引くPRキャラクターやキャッチコピー、ロゴマーク、知的財産権の取得など候補は身近にたくさんあります。

つまり、自社の独自の貢献=「何をもって覚えられるか」ということがブランドに直結するということです。それは、長年の信用(創業○周年など)や地道な活動の積み重ねであったりする場合もあります。

ブランド理論で有名なデービッド・アーカー氏は自身の著作『ブランド論-無形の差別化をつくる20の基本原則』の中で、ブランドとは何か?」という問いに対し「組織から顧客への約束であると答えています。ブランドは企業のビジョンやお客様との関係、組織の価値観などを明確化し、ステークホルダーを刺激する強力なメッセージです

ブランディングを決して特殊な活動と捉えず、まずは改めて自社の棚卸しをし、特徴やユニークな点、お客様から評価されている部分などを洗い出してみてはいかがでしょうか?
実は今まで当たり前であった日々の業務がブランドにつながる発見となるかもしれません。

 

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