№128-R4.2月号 ガソリン価格の疑問

価格高騰の要因

ガソリン価格が依然として高騰しています。参考値として、昨年同時期に給油した際のレシートを見てみましたが、126円/ℓでした。地域性等で若干の差異はあるものの、現時点で当時より40円~45円/ℓ程度上がっている印象です。

急激な価格上昇には、産油国がコロナウィルスの再拡大で原油が余り、価格の下落を懸念して追加増産を拒否していることが背景にあると言われています。

また、今後ロシアがウクライナへ侵攻し、欧州への天然ガスの供給が制限されれば、原油の需要はさらに上がりそうです。

以前にもお伝えしましたが、ガソリン価格は単に国内の需要と供給のバランスで決まるものでなく、産油国のさじ加減が大きく影響しています。

一方で、シェールオイルの登場により米国が原油輸出国側に転じたことで協調減産(カルテル)の維持が難しくなっていることも事実です。

各国の思惑が入り乱れると、カルテルが崩壊しやすくなることは、「囚人のジレンマ」を連想すれば理解できます。「他国が協調を守ったとしても破ったとしても、自国は破った方が有利」のような意思決定となりやすいからです。

産油国でない日本は、成り行きを見守るのみですが、ガソリン価格高騰の長期化は、すでに運送業やタクシー業界などで多大なコスト負担となって数字に表れています。

ガソリン価格の基礎知識

ガソリン価格の根拠となる原油価格とは、原油が取引される際の価格です。原油価格の国際的な指標は、ブレント原油価格(北海原油)、主に米国の指標となるWTI、アジアの指標であるドバイ原油価格が三大指標と呼ばれています。

大部分を中東産の原油に依存(2019年度で89.6%)している日本の指標は、他の産油国の原油と異なり重質で硫黄分が多いドバイ原油価格です。相場ですので、前述の産油国の供給動向や政治情勢などの影響に加え、投機的資金によって上下することもあります。

次に、ガソリンの価格構成ですが、170円/ℓとした場合、ガソリン税(本則税率)28.7円、ガソリン税(暫定税率)25.1円、石油石炭税2.8円、消費税15.5円となり、本体価格は97.9円です。

消費税がガソリン税と石油石炭税を含んだ価格にかかっているため、明らかな二重課税であり、税金の合計で約72円というのも改めて負担の多さに気付かされます。

給油所の損益分岐点マージンが12円~15円/ℓと言われますので、EVやHVの普及に加えて価格変動リスクが高いのであれば給油所のビジネスモデルは今後さらに困難を極めそうです。

対応策への疑問

経済産業省は補助金を石油元売り各社に支給し、その分をガソリンと灯油、軽油、重油の卸値から差し引いてもらうことで給油所などの小売価格の上昇を抑える対策を打ち出しました。

補助金の額は、前月27日からの発動初週は3.4円/ℓ、今月3日からの2週目は3.7円/ℓ、9日にはドバイ原油のスポット価格が1バレル90ドル近くに上昇したため、10日からの3週目は上限の5円/ℓに達しています。

ここで単純な疑問が生じるのですが、政府は何故、石油元売り各社に補助金を出すことを優先させるのでしょうか? ガソリン価格には、税金が72円も含まれますので、価格が安定するまではガソリン税を調整することで適正な価格を維持できるはずです。

税金の減額も補助金の支出も同額であれば国庫金の在り高自体は変わりません。どちらかと言えば、補助金の支出は資金の海外流出につながってしまいます。

実は前述のガソリン税(暫定税率)25.1円は、東日本大震災の復興財源確保のために上乗せされた部分で、指標となるガソリン価格の平均が3か月続けて160円/ℓ超となった場合、税率上乗せ分を一時停止する通称「トリガー条項」の発動が現在は凍結されているのです。

発動には法改正が必要となることもあり、補助金が優先されているのかもしれません。萩生田経済産業相も「有効的に使えるのならば、使うことは常に考えていく」と話していますので、今後の動向に注目したいところです。今回は多くの企業で支出されているガソリン価格について少し掘り下げてみました。

 

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