№129-R4.3月号 認知度を高めたい資格3選
中小企業診断士(中小企業支援法)
世間には様々な資格が存在しますが、企業経営において必要とされる代理業務は何となく理解しているものの、実際にどのような機会に依頼するのか不明瞭な資格もあるのではないでしょうか?
小規模経営では、決算書を作成し、納税額を申告する税理士の存在は特に大きいでしょう。事業者には申告義務があり、その申告手続きが煩雑であることが税理士に依頼せざるを得ない最大の理由です。特別な事情がない限り、税理士さえ契約しておけば、会社は何とか存続できてしまいます。
その他、会社設立や役員変更登記、不動産登記等で司法書士、給与計算や社会保険等の届け出、労務関連の相談で社会保険労務士、トラブルの際に弁護士あたりまでは、スポットで利用することもあり、比較的イメージしやすい資格です。
では、中小企業診断士はいかがでしょうか? 最近では、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、国から様々な給付金や補助金が支給されており、その申請代行などで耳にする機会が多少増えたかもしれません。
資格としては、経済産業省に登録する経営コンサルタントということで、中小企業において経営助言等を行う中心的存在であり、経営者と共に経営計画や資金計画を策定・検証する立場です。しかしながら、経営コンサルティングは独占業務ではないため、誰もが簡単に参入できてしまいます。
業務の幅広さもありますが、実務的には顧問税理士が大部分をカバーしているのが現状です。本来、中小企業診断士に独占的に認めるべき「経営革新等認定支援機関」や直近では事業復活支援金の申請に関与する「登録確認機関」でさえ、最大の構成員は税理士(税理士法人を含む)となっています。
顧問契約のスタイルが常態化しており、中小企業の伴奏役を実際に税理士が担っていることが中小企業診断士の活躍の場を狭めているのでしょう。補助金の申請や経営革新計画の策定等も税理士や商工会・商工会議所が代行しますので、取り立てて必要とされる資格ではないことが認知度の低い要因のようです。
不動産鑑定士(不動産鑑定評価法)
企業が所有する不動産の経済価値を判定する専門家です。具体的には不動産の売却や等価交換、現物出資等で「不動産鑑定評価書」が必要な場合に作成を依頼します。
しかし、土地を売る場合、不動産鑑定士に直接依頼するようなケースがどの程度あるでしょうか? 例えば、会社の土地を社長に売る場合、時価で取引するのが原則となっていますが、そのようなときに実勢価格に精通している不動産鑑定士に依頼して公正妥当な価格を査定してもらうことになります。
何故なら、同族間取引ではどうしても恣意性が入りがちですので、客観的な鑑定評価による取引であれば、税務署による定額譲渡や役員給与の認定を回避できる可能性が高まるからです。
実務の現場では、税理士が路線価から実勢価格を算出して同族取引で使用する例が多く見られますが、近隣取引の実態等を把握している不動産鑑定士が評価することで取引価額が低く抑えられるケースもあるため、特に高騰している土地や不整形地などは鑑定を依頼することをお勧めします。
弁理士(弁理士法)
国内外における発明、意匠(デザイン)、商標(ブランド)の調査、権利化及び他社権利化回避に関するコンサルティングや特許庁への出願・登録の代理業務を行う専門家です。
特許や意匠などは、小規模企業とは無縁だと認識している経営者も少なくなく、常に新製品を研究・開発しているような業態を除いては、企業側から申請を依頼する機会は少ないしょう。弊社も商標を4件登録していますが、実際のところ登録がなかったとしても、業務に支障はありません。
総じて、知的財産権を保護すべき製品やサービスがなければ、弁理士に依頼する機会もないことになります。しかし、知財に該当するか否かの判定は、素人には難しく、弁理士に自社の商品や技術を相談してみることで眠っていた原石が宝石に変わればラッキーです。
身近なところで、商標登録からブランディングしてみることも、自社のマーケティング活動に一役買うことになります。
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