№133-R4.7月号 産業財産権の活用
登録の可否は弁理士の手腕
先日、弊社が特許庁に申請していました「ハイブリッド・コンサルティング」の商標が無事に登録査定されました。出願日が昨年の8月5日でしたので、登録までに約11カ月を要したことになります。
実はこの商標、今年3月に審査官から「拒絶理由通知書」を受けたものでした。商標権とは、商品又はサービスについて使用する商標に対して与えられる独占排他権で、商標として保護されるのは、文字、図形、記号の他、立体的形状や音等が含まれます。
身近な例では、右上にⓇが付いているロゴやマーク、名称などです。商標は企業イメージを高めることにも大いに役立ち、その商品の売れ行きにも影響を与えますが、前提として登録には「自他商品識別機能」を有している必要があります。
つまり、独自のネーミングを使用することで、他社の商品(サービス)と明確に区別できることが条件です。弊社の商標も、この部分が拒絶理由に該当したと思われます。「ハイブリッド」も「コンサルティング」も一般的な用語で、それらを組み合わせただけの商標と判断されたのでしょう。
しかし、依頼した友人の弁理士は、この流れを最初から想定済みでした。結果的に、特許庁に対して「意見書」(拒絶理由に対する反論書)を提出することで、速やかに登録査定に至ったのです。経過の詳細は「特許情報プラットフォーム」に公開されていますので、ご興味がありましたらご覧下さい。
よく、産業財産権の登録は弁理士の手腕だと言われますが、今回その言葉を実感することになりました。
特許権と取得メリット
今月7日付けの日経新聞朝刊1面に「全固体電池、特許数でトヨタ首位」という記事が掲載されていました。電気自動車(EV)向け次世代電池の本命とされる「全固体電池」の研究開発でトヨタ自動車を含めた日本企業6社(関連特許数上位10位以内)が先行しているという内容です。
世界の「特許出願数/国際特許出願件数」でも日本は、中国、米国に次ぐ3位を維持していますので、この部分では何とか技術大国の面目を保っていると言えます。
特許権とは、特許を受けた発明を独占的に実施することができる権利です。特許権を有する特許権者は、特許発明を実施することができるとともに、正当な権利のない第三者の実施を排除することができます。出願日から原則として20年間、その発明の利用を独占することができるため、世間に受け入れられる発明をすれば、企業の発展に大いに貢献することでしょう。
訴訟にまで発展した「青色発光ダイオード」も有名な発明の一つです。このケースでは、発明者への企業の補償金が200億円に達しました。身近な発明品の例でも、「洗濯糸くず取り」 3億円、「汗取りパット」毎月1,300万円のライセンス料など、一般の方々が多くの発明の利を得ています。
決して高度な技術を要せずとも、日常の不便さを解消することを少し意識すれば、まだまだ発明の余地はありそうです。
知財(産業財産)戦略のススメ
その他、産業財産権には物品の形状、構造、組み合わせに係る考案を保護する「実用新案権」や工業デザインなどを守る「意匠権」などがあり、登録することで一定期間排他的独占権を得ることができます。
一方で、特許権等は保護期間の終了後、その発明等を公開して利用の機会を図ることにより新しい技術を人類共通の財産としていくことを定めることで、技術の進歩を促進し、産業の発達に寄与しようとするものです。
登録に要する費用は、「特許権」が出願料、出願審査請求料、特許料(1~3年)で約20万円、別途弁理士費用が30万円~40万円、「商標権」(1区分 登録料10年分)であれば、出願・登録料で約5万円、別途弁理士費用が5万円~10万円程度かかります。
事業にとって有効な産業財産を独占所有できるのであれば、コストパフォーマンスは十分でしょう。弊社も今回で5商標目の登録となりました。専門家の目で見れば、毎日当然のように接している製品や技術、デザインに実はお宝が隠れているかもしれません。自社のブランディング強化や他社との差別化を図るためにも、身近なところから産業財産権の取得を目指してみてはいかがでしょうか?
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