№138-R4.12月号 EBITDAの見方

EBITDAとは

財務分析をしていると、「EBITDA」という指標を目にする機会が以前より増えたような気がします。この指標、そもそも何と読むかもわかりにくい名称ですが、「イービットディーエー」「イービッタ」「エビーダ」などさまざまで、一般的には、「EBIT・D・A(イービット・ディー・エー)」が呼称として使われることが多い印象です。

EBITDAは、Earnings , Before , Interest , Taxes , Depreciation , Amortization(Depreciationは、建物等有形固定資産の減価償却費、Amortizationは、のれんやソフトウェアなど無形固定資産の減価償却費)のそれぞれの頭文字で、単純に和訳すると「利払い前・税引き前、減価償却前利益」となり、計算式では、「税引前当期利益+支払利息+減価償却費+その他の償却費」となります。

他の分析指標、例えば、「流動比率」「自己資本比率」のようにわかりやすい名称であれば、もう少し身近に感じるのでしょうが、正確に理解していない専門家も多く、経営者に馴染みがないのも無理はありません。

しかし、経産省が推奨する簡易企業診断ツールローカルベンチマーク(ロカベン)」の財務分析結果の中で、健全性指標として「EBITDA有利子負債倍率」が登場していますので、中小企業において重要性が高まりつつあることは確かです。

簡易キャッシュフロー

算式は、和訳通りには前述の内容になりますが、「ローカルベンチマーク」を始め、実務的には多くの場合「営業利益+減価償却費(+その他の償却費)」が使われます

つまり、ここで算出される数値は、簡易キャッシュフローです。しかも、営業外収支が抜けているので、会社によってはかなりざっくりとしたキャッシュフローになります。何故、当期純利益ではなく、営業利益が使われるかというと、損益計算書の営業利益以下は国によって会計基準が異なるからです。

例えば、「経常利益」は日本独自の利益の概念で、IFARSを始め、他国の会計基準には存在しません。また、国によって金利水準、税率、減価償却方法なども様々ですEBITDAはそれらの影響を受けませんし、何より営業利益は本業の業績を反映する利益ですので、経常的な業績を判断する上では、営業利益に支出を伴わない経費である減価償却費を加算するのが最も現実的な一定期間に稼いだキャッシュとなります。

そのため、特に、事業計画書を作成する際にはEBITDAが説得力を示す指標になるはずですが、実際に使用している専門家はかなり少数です。事業計画書は多くの場合、金融機関用として作成されますので、減価償却の多寡に影響されないEBITDAを記載すれば、返済可能資金がその期(月)にどれだけあるかが一目瞭然に示せます。

利用法と注意点

今後、中小企業においても海外取引が進むことが予想されますが、EBITDAは海外の競合他社との業績比較や分析をする際に便利です自社の商品を海外展開するにはどの程度のEBITDAが必要かなど、採算の目安としても利用できます

「ローカルベンチマーク」の財務分析で使用される「EBITDA有利子負債倍率」については、「インタレスト・カバレッジ・レシオ」同様、低金利の時代に健全性や安全性の指標として相応しいものか個人的には疑問ですが、「EBITDA」に注目する機会が与えられるという観点では良いかもしれません。

分析値として利用するのであれば、売上に占めるEBITDAの割合を示す「EBITDAマージン」の方が収益性を判断する場合などに適していますし、実務でも参考にしています。反対に注意すべき点としては、設備投資による損失をマイナス要因として取り込むことができないことです

実際には将来的に利益を生み出すために行った設備投資が、結果的には過剰な支出となり、損失にいたるケースがありますが、EBITDAでは、これを認識することができません。

EBITDAは経営判断において、最も端的に状況を把握できるKPIの一つです。ビジネス談義の中で日常的に使うことができれば、業績を常に意識している優良な会社(経営者)の証にもなります。

 

<複製・転写等禁止>