№142-R5.4月号 中小企業の資本金

資本金(設立時)の決め方

先日、法人成り(個人事業を法人化)を検討されている事業者様から「資本金」についてのご相談がありました。個人的な印象ですが、法人の設立に際しては、「資本金」の意味を十分に理解せずに進めている事業主が多い気がします。

例えば、「法人を設立するための資金です」とお答えしたら、どうでしょうか。何となく、わかったような感じでそれ以上追求されることは少ないと思います。資金ということであれば、どう決めるかですが、その観点では会社のスタートアップに必要な金額ということになるでしょう。

具体的には、設立費用から売り上げ(入金)が見込めるまで数か月間の運転資金、最低の設備や消耗品などに要する支出などの合計です。この金額は、最初から設備の購入や社員を雇用する必要がある業種であれば多くなりますし、パソコン1台で始められる業種であれば少額で済むことになります

より簡潔に示すのであれば、「資本金」は当面の間、会社を運営するための元手(元入金)と言い換えても伝わるかもしれません。2006年に会社法が新たに施行された際に最低資本金制度が撤廃されていますので、現在ではこの「当面いくら必要か」という基準で最初の資本金額を設定することが可能ですが、実際にはその金額を正確に見積もったような資本金を目にすることはありません。

体裁、投資としての資本金

前述の通り、最低資本金が定められていないのですから、パソコン1台と最低の消耗品で「資本金」10万円を法人口座へ入れて会社を始めることは会社法上何の問題もありません。そもそも、法人を設立する理由として多くの場合、利益が見込めることや取引先開拓において個人事業より有利であることなどがあげられます。このような成長を目論む会社が「資本金」10万円というのはいかがなものでしょうか。取引先への不安、金融機関に対しての信用、社員の募集広告やHPでの印象など、様々な機会に悪影響を及ぼしかねません

では、設立時の「資本金」としていくらが妥当かというと、私は最低300万円とご提案していますこれは、会社法施行前の有限会社の最低資本金を踏襲したものですが、「会社を作るのであれば、最低300万円くらい準備しなさい」という意味で、「幽霊会社」の乱発を阻止する効果がありました。

財務面でも「資本金」10万円で、期中に資金が不足して100万円を社長から借りれば、最初の決算から債務超過ですが、「資本金」が300万円であれば、100万円は吸収できます借入を当てにする事業計画も拝見しますが、当初は実績がないため、十分な融資は期待できないでしょう。

また、負債と資本の根本的な違いとして、負債は返済義務があるのに対して、資本は返済義務がないという点も理解しておくべきです借換保証を含め、現在も返済負担で多くの企業が窮地に立たされています。可能であれば、自社への投資資金としての「資本金」はある程度多い方が有利です。

出資の配分と手法

最後に、「資本金」をどう集めるかですが、中小企業の場合は「所有」と「経営」が一致していることが安定経営の前提ですので、可能な限り社長が全額負担(出資)することをお勧めします会社が成長し、利益剰余金が増えると株価が上昇してしまい、出資者が多いと揉める原因となるからです。

仲の良い兄弟でも、お互い配偶者を持つと、生活の主体が変わるため、持分によっては会社の支配権にまで影響が出てしまいますまた、設立時には資金不足で親に半分出資してもらうようなケースであれば、面倒でも社長が親から個人的に出資相当額を借りて、自らの出資分と合わせて「資本金」とすべきです。親の出資分はいずれ相続の対象になります同様の理由で、設立後も後継者が決まっていない段階で、複数の子供に株式を分散することも賛成できません。

他にも、法人成りであれば、車両や機械などを現物出資する方法もあり、資金を多く積まずに「資本金」を1,000万円にすることも可能です中小企業の「資本金」は上場企業とは異なり流動性ない分、長期間放置されがちです。これを機に一度自社の「資本金」(純資産)やその構成にも注目してみて下さい。

 

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