№150-R5.12月号 コンサル会社の倒産

倒産会社の増加実態

今月2日、「Yahoo!ニューストピックス」の見出しに「経営のプロ「コンサル会社」の倒産が急増 ~ コロナ禍での政策支援と「本物を求めるニーズ」のはざまで ~」という記事を見つけました。

主な内容は、東京商工リサーチの調査で、2023年は10月までに経営コンサル会社の倒産が過去最多の116件に達し、同期間(1-10月)で最多だった2009年(109件)を大幅に上回り、このままのペースで推移すると、2009年の128件を抜いて、2023年は過去最多の記録を塗り替える勢いであるというものです。

今年になってコロナ融資の返済開始等の影響で、倒産件数自体は前年比で大幅に増加しているということは仕事柄肌感覚でも実感していましたが、まさか経営の指導者的立場にある存在が経営に行き詰まるということは想像さえできませんでした

116件のうち、90件(77.5%)が「販売不振」によるものであり、また104件(89.6%)は負債1億円未満の小規模事業者という実態から、顧問先企業の業績悪化(主にコロナの影響)やコロナ禍で急増した補助金申請等への依存体質が資金繰りを悪化させたものと推察されます。

例えとして相応しいかはわかりませんが、最近警察官の不祥事が相次いでいるように、職業への信頼という面では大変ショッキングな情報であり、同業者の立場からもとても信じ難い事実です。

コンサルスタイルとコンサル以前

経営コンサルタントは、創業時に多額の資金が不要で、資格も特に必須でないため参入障壁が低く、セカンドキャリアとしても自身の専門スキルが活かせれば事業としての大きな可能性を秘めています。

業界的には、マーケティング、人材育成、財務など特化した分野を前面に出すケースもあれば、飲食や美容業、製造業などの専門コンサルタント、規模も大手コンサルティングファームから個人事務所まで実に多種多様で「玉石混交」の業種です。

中小企業診断士が小規模で開業するケースや税理士や行政書士などの独占業務を持つ有資格者の兼業も数多く見られます。

この業界の倒産増加までは予期できませんでしたが、コロナ禍以前より特化型コンサルタント(例えば、飲食専門など)や政府や自治体の各種支援金へ依存度を高める戦略には、若手コンサルタントを育成する立場として警鐘を鳴らしていました他人を指導する前に自身の経営を冷静に考えればわかりますが、これらは中長期的な世の中の変化に対して業務としての耐性が非常に脆弱です

私の周囲にも昨年、補助金の申請報酬をメインに数千万円~1億円以上稼いで有頂天になっているコンサルがいましたが、彼らは補助金という梯子を外されてしまったら自社をどう経営していくのか…、経営コンサルタントとして心配です。

経営コンサルタントの在り方

前述の補助金申請の過熱では、不誠実な事案を数多く耳にしました。特に、金額の大きい「事業再構築補助金」では、計画段階で補助金を獲得することが目的となってしまい、本来の「事業再構築」の部分が完全に失われてしまうといったケースです。

私が目にしたのは中小企業診断士が関わった案件が多く、多額の報酬を得てアフターは関与せずというものが大部分でした。コロナ禍で本業が危機に瀕した際には、藁にもすがる思いだったかもしれませんが、申請計画を見る限り内容そのものが破綻しており、アフターコロナではコロナ禍以上に苦境に立たされてしまっています。そのような申請を誘導支援した似非コンサルタントが倒産増加に含まれているのであればまさに自業自得です。

持論ではありますが、経営コンサルタントのあるべき姿は、正しい経営判断ができるよう過去の事例に学び、咀嚼した上で自分事として提供し続けることであると確信します。この先、顧問先の業界がどのような状況になっていくかを予測するための情報収集も欠かせません。ご縁ができたのであれば、お客様を発展・成功させるという強い意識がない限り、経営コンサルタントを名乗るに値しないくらいのコミットメントが必要です。
結果として、目先の報酬に惑わされない財務基盤を築くことにつながらないのであれば、そのコンサル自体が「良い仕事」か否かの判断基準になります

 

<複製・転写等禁止>