№155-R6.5月号 クレームの捉え方
クレームは気付き
どのような業種であれ、商売を営んでいる限りお客様とのちょっとしたトラブルは発生してしまうものです。ホテルのフロントや病院の窓口、行列のできる店舗など様々な場面でそのような光景を目にすることがあります。
商売は「お客様第一」が原則ですので、予期せぬクレームが発生した場合には、適切な対応を心掛けることに終始しなければなりません。
そもそも、クレームに対して「処理」という言葉を使っている時点で大きな間違いですし、そこに気付かないような会社は残念ですが成長や発展はないだろうと考えてしまいます。いわゆる「クレーマー」と称される特定の人は除いて、勇気を出して言いにくい意見を伝えてくれる有難い存在であり、自社のサポーターかもしれないと捉えるべきなのです。
「サイレント・マジョリティ」という言葉があるように、余程魅力のある商品やサービスを提供していない限り、積極的には発言しない大多数のお客様は黙って(クレームを言わずに)自社から離れていくことでしょう。いただいたクレームは、「ご意見承りカード」などという名目で、誰がどのような内容のクレームを受け、どのように対応したかを記載し、改善策を全社で共有します。
これを継続し、活かすことができれば、今後の接客、販売力アップが期待でき、会社の管理・運営レベルの向上につながるはずです。絶対にNGなのは、「クレームゼロ」の推進で、クレームがないことを目標にすると、社員はクレームを隠すようになります。
対応での心掛け
クレームにつながるトラブルは多岐に渡ります。例えば、先に注文したのに後に注文した人の料理が先に出たとき、対応した担当者の言葉遣いや態度が悪いと感じたとき、購入した商品が不良品であったときなどです。
明らかにお客様の都合でない限り、反論はせず、伏し目がちに「申しわけございません」「大変ご迷惑をお掛けいたしました」「おっしゃるとおりでございます」などと、相槌を打ちながら丁寧に主張をお聞きします。十分にお話をお聞きし、感情を害してしまったことに対してお詫びすることでお客様がスッキリして解決してしまうこともあるでしょう。
責任者や社長を出せ、と言われる場合は、地位の高い人に話を聞いてもらいたいという心理があるため、素直に従うことで収まる場合もあります。予備知識として、「お詫び」と「謝罪」の違いについて理解しておくことも重要です。そして、状況を把握し、少し落ち着いたところで、「代金を返金する」「商品を交換する」「損害額を弁償する」など、こちらから解決方法を提案してみます。
誠意をもって対応すれば、大抵の場合はこの段階で大きな損失を被らずにクレームは収まるものです。一般的には、①主張を十分に聞いて心情を理解する、②不快にさせたことをお詫びする、③事実を確認して解決策を提案する、のような行動を意識しておくとよいでしょう。
「クレーム」と「クレーマー」
現実には、残念ながら「クレーマー」と言わざるを得ない方々も存在します。「クレーマー」の典型的な行為は、些細なミスに対して理不尽で特別な対応・過大な要求をする、大声を出して恫喝をする、不合理な内容の「念書」や「一筆」を要求するなどです。
最近では、SNSに根拠のない内容で誹謗中傷を書き込まれる被害も増えており、学校ではいわゆる「モンペ」の存在が深刻化したこともありました。金銭目当てか、何かの腹いせか、繁盛へのやっかみか目的は定かではありませんが、まともに対峙するのは厄介ですし、精神的にも苦痛です。
効果的な対処法があるわけではありませんが、前述のクレーム対応の手順を進めながら、会話の録音や防犯カメラの設置による証拠収集、予防策として「カスハラに対する行動指針」の制定・発信なども必要でしょう。
「お客様第一」は原則ですが、「クレーマー」はもちろん、他のお客様に迷惑をかける行為や法令違反を要求する行為があるとしたら、その方々はお客様ではりませんので、即刻取引を中止すべきです。グッドマンの法則では、「クレームの対応によって、その後の再購入決定率が変わってくる」という相関関係を示し、「苦情は宝物」と述べています。クレームは会社が成長するためのきっかけを与えてくれる良い機会と捉えるべきです。
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