№159-R6.9月号 経営者向けの節税型貯蓄

小規模企業共済

岸田政権は、「新しい資本主義」の実現に向けた取組の中で「所得資産倍増計画」を公約に掲げ、新NISAの導入を進めました。幅広い世代で将来への不安を実感していることもあり、新NISAの口座開設や検討をしている人の割合も増えてきている状況です。今回は経営者がそんなお得な新NISAの前に検討すべき節税型貯蓄商品をご紹介します。

最初は独立行政法人中小企業基盤整備機構が提供する小規模企業の役員、個人事業主向けの退職金制度である「小規模企業共済」です。比較的有名な制度ですので詳細は省略しますが、簡潔に言うと掛金が全額所得控除となるだけでなく、一定期間掛け続けることによって退職・廃業時の受取りの際には掛金の最大120%相当額が戻り、退職所得扱いとすればさらに所得税を大幅に節税することができるお得な制度です

これだけでも大変魅力的な制度なのですが、小規模企業共済」には掛金の範囲内(掛金納付月数により掛金の7~9割)で、10万円以上2,000万円以内の資金を低金利(通常1.5%)で借りられる「契約者貸付制度」が存在します面倒な手続きが不要で全国の商工中金の窓口で最短即日入金が可能です。使途が自由ということで、最近では年利1.5%で「契約者貸付制度」を利用して借り続け、借りたお金を新NISAで投資して運用益を得るスキームが流行っています

 

企業型確定拠出年金(企業型DC)

個人型確定拠出年金(iDeCo)を利用することでも掛金は「小規模企業共済」同様のメリットを受けることができますが、会社経営者であれば、個人事業主ほどの掛金を拠出できないため、「企業型DC」への加入がお勧めです。

近年では、福利厚生目的で中退共や特退共の代わりに導入する企業も増えています。代表者・役員が加入できることや掛金分を給与として受け取るか、「企業型DC」の掛金として拠出するかが選択可能(選択型DC)であることなどが選ばれている理由です。

企業型DC」は、一人法人(ひとり社長)であっても導入が可能ですし、前述の選択制を採用すれば社長だけが加入することもできます掛金は全額法人で損金算入でき、上限5.5万円(月額)を税金や社会保険料の対象とせずにダイレクトに個人資産へ移行できること、掛金は個人で運用できて新NISA同様に運用益は非課税となることがポイントです

原則60歳まで解約できないことや運営管理機関への手数料が発生するなどのデメリットもありますが、経営者であれば、掛金の上限が低く(上限2.3万円)税引き後の可処分所得から積み立てる個人型確定拠出年金(iDeCo)より優先順位が高いといえるでしょう。

 

はぐくみ企業年金

2018年4月に厚生労働大臣の認可を受けて設立された確定給付企業年金基金です。福祉業界で働く方々の資産形成のため設立され、㈱ベター・プレイスが運営委託機関となり今では福祉業界以外の法人にも広く普及しています。

確定給付企業年金(DB)ですので前述の「企業型DC」とは異なり、運用リスクを事業主が負うことになりますが、複数の国内大手生命保険会社に運用を委託することなどで積み立て不足が起こりにくい仕組みを作っている点が特徴です。

はぐくみ企業年金」は、退職時、休職時、及び育児・介護休業時いずれのタイミングでも受け取りが可能で、個人で運用ができない分使い勝手は良くなっています。「企業型DC」の加入可能年齢上限が65歳である一方、「はぐくみ企業年金」は70歳まで加入できることや非正規雇用者も加入できることも時代のニーズに適っており離職率の低下も期待できそうです。

また、経営者個人は会社の損金で給与の20%(上限100万円)まで拠出できることが他の制度が及ばない最大のメリットになります

以上、3つの制度を紹介しましたが、経営者(事業主)が自らの決断で加入できるお得な節税型の貯蓄・投資ばかりです。報道等で新NISAが話題に上る機会が増えていますが、その前に是非今一度ここでご紹介した制度への加入を検討してみてください。

 

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