№64-H28.10月号 長寿企業の秘訣

日本は長寿企業大国

先日、会員登録をしている「100年経営研究機構」の第1回年次総会に参加してまいりました。簡単に述べますと、100年以上続いている長寿企業を有識者や専門家が多角的に研究し、データベースを構築したり、学ぶ機会や情報発信をしていく組織の大会のような催しです。

世界には創業100年以上続く企業が約2万6千社、200年以上では7,212社あると言われています。その200年以上続く企業のうち、なんと43%にあたる3,113社が日本企業であるということはご存知でしたでしょうか? 実は昨今、日本は長寿企業大国として世界から大いに注目を集めているのです。新聞紙上で、倒産企業は減少傾向にあるものの、その背後で休廃業・解散企業は増加しているといった統計を時折見ますが、長寿企業が多いという情報はあまり目にする機会がありません。

また、一説には10年以上継続する企業は10社に1社であるとか、企業の平均寿命は18年などとも言われています。ヒトの平均寿命が約84歳であるのと比較すると、実に4.7分の1程度です。一度立ち上げた企業を存続させることがいかに難しいかがよくわかります。

超長寿企業の紹介

ここで、中でも特筆すべき企業を少し紹介します。

日本で一番(世界で一番)の長寿企業は、創業578年で大阪市四天王寺にある金剛組という神社仏閣建築の設計施工から復元・修理などを手掛けている会社です。会社沿革には、「578年、四天王寺建立のため聖徳太子によって百済より招かれた3人の宮大工(金剛、早水、永路)のうちの1人である金剛重光により創業」と記されています。創業1438年、2013年10月28日に39代目の金剛利隆氏が後継者不在で亡くなりますが、現在も続いています。

また、718年(養老2年)に創業した石川県小松市粟津温泉の法師という旅館も有名です。「粟津温泉の開湯と同時に白山開祖の泰澄法師の命によって湯治場として718年に開業」とあり、現在は46代目の当主が承継しています。実は2011年2月まで「ギネス・ワールド・レコーズ」の「世界で最も歴史のある旅館」として登録されていたのですが、同じ日本の慶雲館(山梨県西山温泉:705年(慶雲2年))にその座を奪われました。

これら企業が気の遠くなるような歴史を経る過程では、記録を見る限り何度も危機的状況を乗り越えていることがわかります。一概には言えませんが、宮大工や旅館といった業種は、製造業や小売業に比べれば時代背景に大きく影響されず、存続しやすいという事情もあるかもしれません。

企業永続の秘訣

では、長寿企業にはどのような秘訣や共通点があるのでしょうか? 最も興味深いところなのですが、研究結果は至ってシンプルなものでした。

一つは、「身の丈経営であること」。少々の背伸びは発展に必要ですが、一か八かといったチャレンジは禁物です。

次に、「社会の中のお役立ち」という意識、企業理念を労使が共有し、社会貢献できる喜びを感じること。

最後に「限られた資源の有効活用」、人、物、金、情報を有効に使い、生産性を上げることです。改めて考えるまでもなく、企業経営において大切なことは、今も昔も何も変わらないというのが結論です。それぞれの時代において、技術的に進化するための努力や工夫は必要ですが、根幹は、いつの世もどんな業種でも同じであるということになります。

つまり、長寿企業に秘訣などというものがあるのではなく、当たり前のことを実直に、利他の精神で徹底的にやり続けるということなのではないでしょうか?言葉にするのは簡単ですが、長期にわたってこの精神を貫くことは容易でないことはわかります。「次の時代を見据えつつ、目の前の仕事に誠実に取り組む」、この地道な姿勢を続ける意識こそが結果的に長寿企業を生み出すための遠い近道なのかもしれません。

今後も研究には参加し、気付きにつきましては現場でお伝えしてまいります。

 

〈複製・転写等禁止〉