№65-H28.11月号 人口減少がもたらすもの ~その2~
総人口は減少、愛知県は増加
先月26日、総務省が公表した2015年国勢調査の確定値で、外国人を含む日本の総人口が15年10月1日時点で1憶2709万4745人となり、5年前の調査から96万人減少したことがわかりました。1920年の調査開始以来、減少に転じたのは初めてのことで、同時に75歳以上の人口も1612万人と総人口の「8人に1人」を占め、初めて14歳以下の1588万人を上回る結果となりました。
毎年1月1日の新聞紙上で、厚生労働省が前年の出生数と死亡数の推計を発表していますので、人口が自然減の状態にあることは認識していましたが、いよいよ本格的な人手不足(特に若者)が到来すると考えると、特に中小企業経営においては漠然とした焦りや不安を抱きがちになります。
参考までに昨年の自然減数(推計)は約29万4千人ですので、毎年中核市に相当する人口が減っている計算です。日本の総人口が減る中、愛知県では、748万3128人と前回調査に比べて1.0%の増加となっています。全国でも増加はわずか8県で、この5年間、自動車産業を中心に製造業が好調であったことに加え、リニア中央新幹線の開通への期待感が他地域からの人口流入をもたらしたとみられています。余程大きな変化がない限り、この先5年間も同様の状況が続くことが期待できそうです。
人口減少による問題(労働力不足)
人口が減少することで、企業にも様々な問題が発生します。中でも労働力不足はすでに深刻になりつつあり、人材を何とか確保すべく時給の引き上げや定年延長などを余儀なくされる企業も年々後を絶ちません。
その解消策の一つとして、以前から女性の積極的な社会参加が注目されています。政府や自治体も子育て世代への託児所や保育施設の拡充、女性の起業に対する優遇制度など多くの施策を実施しており、最近では「配偶者控除」の対象となる収入の要件を150万円に引き上げる税制改正案も浮上しています。
日本の女性の潜在労働力はまだまだ余力があると言われていますので、今後の企業存続をより堅固なものにするためには、女性の働き場の確保が労働生産性の向上と並んで最優先課題になるのではないでしょうか。
人口減少による問題(社会保険制度)
また、社会保険の仕組みにも影響が出てきます。年金制度は「世代間扶養」の賦課方式を基本としていますので、少子高齢化は最大の問題です。負担者の数は、以前は「胴上げ型」(多数の若者が1人の高齢者を負担)、現在が「騎馬戦型」、将来は「肩車型」などとも例えられます。若者世代と企業負担がさらに増え、支給開始年齢を現在の65歳から70歳程度に引き上げ、支給金額が減額されれば、年金制度は何とか持続できそうですが、健康保険は少々厄介なようです。
以前にもお伝えした通り、医療費は毎年1兆円程度増加しています。この勢いで高齢化が進めば、医療費の自己負担も現在の3割を維持するのはとても困難で、団塊世代が後期高齢者となる2025年を目途に負担率の増加は避けられません。
一方で、高額療養費についても少しずつ改正がなされています。現段階では高額所得者に負担を多く求める方向で調整されていますが、将来的には自己負担額の底上げが検討されることでしょう。以前は個人のライフプランの設計に際して、我が国の健康保険制度は充実しているという前提で、民間の医療保険への加入は不要との提案をしてきましたが、今では特に若い世代に対して逆に加入を勧めるようになりました。
最近新聞紙上でAI、IoT、ICT、Fintechなどの言葉が目立つようになってきているのも、大企業を中心に世界戦略のみならず、国内の生産性向上への対策が進行している兆候なのかもしれません。
実はちょうど5年前の当レポートでも同じテーマを取り上げました。5年後はさらに不安をあおるような状況をお伝えすることにならないよう願っています。
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