№70-H29.4月号 景気回復長期化?

景気回復の実感

先日、日経新聞朝刊に「景気回復 戦後3位-アベノミクスで52ヶ月」という記事が1面トップで掲載されていました。2012年12月に始まった「アベノミクス景気」が3月まで続くと、1986年12月から1991年2月の51カ月間だった「バブル経済期」を抜いて戦後3番目の景気回復になるとのことです

言い換えれば「好景気が4年以上続いています」ということですが、実際のところ経営者の皆様はどの程度の景況感をお持ちでしょうか? 一般的に「景気が良い」状態とは、モノが売れて、給料が増えて、世の中のお金回りが良いというのが共通の認識だと思います。

しかしながら、個人消費はなかなか上がりませんし、デフレの域を脱している感もありません景気が良いのであれば、逆にインフレ(物価が持続的に上昇する状態)に近くないと辻褄が合わない気がします。現場でも多くの方々に景気の実感をお聞きするのですが、「一時ほど悪いということはないと思うが…」という意見が大方で、企業全体の約85%を占める小規模企業にとっては、あの「バブル経済期」以上に景気回復期が続いているというのは、違和感であり、信じがたい事実なのが正直な印象です。

 

景気回復の定義

では、政府は何を根拠に「景気回復」と発表しているのでしょうか? この期間を見る代表的な指標が「景気動向指数」です

この統計は内閣府が毎月作成しており、生産、販売、雇用などの景気を映し出す経済活動の指標を集めて指数にしたもので、景気の総合的な現状把握と将来予測に用いられています。そのうち景気回復期間のカウントには、通常、現状が把握しやすい「一致指数(景気の動きと同時に動く)」が使われ、「鉱工業生産指数」、「営業利益(企業業績)」、「有効求人倍率」など9指標で構成されています。

7日に発表された2月の一致指数が115.5(前月比0.4ポイント上昇)で、基調判断は「改善」(景気拡張の可能性が高い)を示していることから、景気回復は継続しているという判断になったのでしょう。

また、今回の結果に影響を与えた寄与度を見ると、「鉱工業生産指数」が最も貢献していますので、生産は良好な状態であることも伺えます。主に大手企業が円安で工業製品の輸出を伸ばしたことが指数上昇を後押ししている状況です。

とは言え、注意してみると金利安による住宅産業の好調、株価や基準地価の上昇、労働市場の安定など、身近に景気回復を実感させる動きも随所にあることに気付きます。

 

景気回復は続くのか

歴史的には2002年2月から2008年2月までの73カ月が戦後最長の景気回復と言われています。この時期は小泉内閣から第一次安倍内閣の時期に重なりますが、振り返ってみても特に長期間景気が良かったという記憶はありません。やはり、世代的に好景気=バブル経済期という印象が強いのでしょう。

では、肝心な今回の景気回復、一体いつまで続くのか? 前述の通り、足元では米国や中国をけん引役に企業の生産や輸出は好調を維持しています。エコノミストの間では、東京五輪前の「2019年ピーク説」の可能性が高いという分析が主流のようです。

要因としては、五輪前の建設需要や首都圏の土地価格が落ち着くことや、19年4月に消費増税が実施されることなどが挙げられています。消費が予定通り伸びなければ、消費税率引き上げの再延長も十分考えられますが、いずれにせよ今から2年程はこの回復状態が続くとの見立てです

振り返れば、安倍政権の「機動的な財政政策」と「大胆な金融政策」でデフレ脱却を最優先した結果がこの景気回復をもたらしています。一方で、景気指標とは裏腹に内需は依然脆弱な状態が続いています。政府・日銀の力に頼らずともあらゆる企業で活動が活発になれば、真に実感の得られる景気回復が訪れるかもしれません。自社の繁栄は自社で築くことが景気回復を持続させる原動力になります。

 

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