№59-H28.5月号 企業理念を明確にする

会社の最重要決定事項

突然「御社の企業理念は?」と尋ねられたとしたら、会社の誰もがすぐに答えられる状況になっていますか? 弊社も創業のお手伝いを数多くさせていただいておりますが、まず最初にお聞きするのがこの「企業理念」です。

なぜなら、それは会社の「目的」であると同時に「存在意義」、つまり、これから会社を運営していくうえでの最重要決定と言えるからです。さらに言い換えるなら、何をもって社会貢献するかということでもあります。

大量の自動車を生産してカーライフをエンジョイしてもらう、美味しい食事や気持ちの良いサービスを提供して満足感や幸福感を得てもらう、伝統技術を生かして文化の承継や発展に寄与するなど、この点においては大企業も零細企業も何ら変わりません。中には単に「お金を儲けたい」という方も少なからず見受けられますが、儲かるということは前提に何らかの社会貢献があり、結果として利益が上がり多額の税金も納めることになりますから多大なる社会貢献です。

しかしながら、お金儲けが目的ということにはなり得ませんので、誤解のないようにして下さい。「どんな良い仕事をすれば結果的に儲かるか?」を具体的に言葉にして宣言する、このように説明した方がもう少しわかりやすいかもしれません。

「目的」と「目標」は違う

もし、企業理念などないという事態があるとしたら、従業員の皆さんは「行先わからない船に乗っている」という状況が良い例えかもしれません。「今季の売上目標○○○円」という行先があるという理屈は大きな間違いです。何故でしょうか?

ここで、「目的」と「目標」の違いを簡単に説明します。「目的」が最終的に目指すものであれば、「目標」はその通過点です。「目標」は「目的」という長い道のりにおける目印とも言えるでしょう。「目標」が具体的なのに対して「目的」は抽象的なものになります。そして、「目標」は比較的短期に達成できるケースが多いです。

このように考えると、企業が目指す「目的」(=企業理念)は簡単に到達することができない理想的な領域という表現が相応しい感じがします。

具体的に「企業理念」の例をあげてみると、稲盛和夫氏の京セラは「全従業員の物心両面の幸福を追求すると同時に、人類、社会の進歩発展に貢献すること」、孫正義氏のソフトバンクは「情報改革で人々を幸せに」、柳井正氏のユニクロは「服を変え、常識を変え、世界を変えていく」などとなっています。

企業理念のイメージをより深く理解していただき、今一度自社のものと照らし合わせてみて下さい。

企業理念にコミットする

同じようなフレーズに「ビジョン」があります。「企業理念」が存在意義であるのに対し、「ビジョン」は中・長期的な未来像のように区分されることが一般的(「企業理念」の概念の一部)ですが、実際のところ、明確に区分していない企業も多いようです。

J・C・コリンズは著書『ビジョナリー・カンパニー』の中で、ビジョン、理念をしっかり持っている会社はそうでない会社と比べて6倍以上も投資収益が高かったと記しています。6年間の調査対象にはビジョナリー・カンパニー18社が選ばれていますが、日本企業では唯一ソニーが名を連ねています。

また、企業の目的について、P・ドラッカーも『現代の経営(上)』において、「事業の目的として有効な定義はただ一つである。それは、顧客を創造することである」と述べています。

「企業理念」は顧客を創造し続ける内容になっていなければ意味をなさないということです。ゆるぎない理念を持つことで会社に一本の太い軸ができます。その軸がぶれない企業が世界中で繁栄していることも裏付けられています。企業理念を明確にし、コミットしましょう。

ちなみに弊社の理念は「関わるお客様をすべて成功に導く」です。

 

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