№60-H28.6月号 AI(人工知能)が仕事を奪う?
AI(人工知能)に関する話題が目を引く機会が増えています。最近では米グーグル社が開発した囲碁AIが世界トップクラスの韓国人棋士に圧勝したり、国内でも東京大学合格を目指す「東ロボくん」が大学入試センター試験で、合計点の偏差値が全国平均を上回る57.8の成績を収めるなど驚異的なニュースが次々と世間を賑わせています。
また、身近な所では、自分で考えて話すことができる人型ロボットのペッパー君やパーソナルアシスタントSiriに触れ、そのレベルの高さを実感された方も少なくないのではないでしょうか?
AI(人工知能)は、学習機能を持ち合わせたコンピューターと考えると理解しやすく、現在でも様々な分野で活躍し、今後も更なる発展が期待されています。その反面、AIによって「識別」、「予測」、「実行」がなされると、人間が行っているあらゆる仕事がAIに取って代わられる可能性も生じてきます。
2015年12月に野村総合研究所が行った調査で、601種の職業のロボットに置き換えられる確率を計算し、その中から「人工知能やロボットによる代替可能性が高い100の職業」が発表されました。
その職業には銀行窓口係や建設作業員、タクシー運転手、行政事務員(国・県市町村)などが含まれています。また、「機械が奪う職業・仕事ランキング(米国)」(週刊ダイヤモンド)という別の調査では、1位~5位の上位が順に小売店販売員、会計士、一般事務員、セールスマン、一般秘書という結果になりました。
これらを裏付けるかのように、海外ではタクシーの自動運転技術も進んでおり、安全性の高さも実証されていますし、国内でもロボットがチェックインから荷物運びまで様々なサービスに対応するハウステンボス内の「変なホテル」が密かに人気を集めているようです。
今では当たり前ですが、自動車メーカーなどでは以前から無数のロボットが配備されており、塗装や溶接、組み立てなど作業現場でフル活躍しています。
参考までにですが、野村総合研究所の調査では、逆に「人工知能やロボットによる代替可能性が低い100の職業」も同時に発表しており、医師、美容師、映画監督、経営コンサルタント(笑)などが該当しています。創造性や協調性が必要な業務や、非定型な業務は将来においても人が担う確率が高いようですが、日本の労働人口の実に49%が人工知能やロボットに代替可能であるとの結果も出ていますので、まったく予断を許さない状況です。
近年では各地で大規模な災害が発生し、甚大な被害が発生しています。個人的には、人が近づけないような危険な場所に入って人命救助や復旧作業ができる高性能なロボットや困難な手術を容易にする医療ロボットの技術などは大いに発展してもらいたい領域です。
話を本題に戻し、それでは肝心な中小企業の経営についてはどうでしょうか? 前述のAI(人工知能)に「識別」、「予測」、「実行」の能力が備わるのであれば、「合理的な意思決定」も可能になってしまうということです。経営に関する世の中のあらゆるデータから経営判断をロボットに委ねる、つまり、ロボット社長やロボットコンサルタントの存在も近い将来あり得るかもしれません。
実際、登記上に記載されないまでも、内々では当社の経営判断はすべてロボットが最も合理的に行っているという事態も想定されます。現在統計上「有効求人倍率」は1.34倍程度で、職を選ばなければ失業することはない状態にありますが、ロボット(AI)による職業の代替は着実に進んでいます。米国では高度専門職の薬剤師もロボットが実用化されようとしています。
AIに取って代わられてしまうのではなく、AIを職業にうまく取り込み、活用できる企業として存続していかなければなりません。期待感と危機感を抱きつつ、今後もAI(人工知能)に関する情報には是非注目してみて下さい。
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