№77-H29.11月号 好景気?実感とのズレ

株高の要因

衆議院議員選挙は、自民党で過半数、自公連立で313議席と3分の2超の議席を獲得する与党圧勝という結果に終わりました。安倍政権が継続するということで、株価は9日の東京株式市場で日経平均がバブル崩壊後最高値の2万3千円台を記録し、1991年2月以来、約26年ぶりに高値圏で推移しています

株価の上昇で、景気が良いというムードが演出されているような感覚も否めませんが、そもそも株価が高値で安定している理由はどこにあるのでしょうか?

「日銀の異次元緩和による円安の効果で、製造業を中心とした企業業績が好調なことが直接株価に反映している」という説明が最も説得力がありそうな気がします。しかし、輸入価格の高騰が業績に影響する企業も多く、必ずしも円安=株高(企業業績による)が成立するわけではなさそうです。

一つは、日銀が前述の市場への資金供給量を増やす「量的緩和」に加え、ETF(上場株式投資信託)や長期国債、上場株式、REIT(不動産投資信託)を大量に購入し、株価を買い支えている、いわゆる「質的緩和」も実施しているということがあります。購入額も大量で、2013年~2016年に4年間で、日銀がETFを10.05兆円、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が上場株式を8.73兆円と公表されていますので、「官製相場」と揶揄されるのも致し方無いかもしれません。簡単に言えば、株価が下がりそうになったら、日銀やGPIFが買い支えているということです。

また、最近では先進国の投資や貿易が改善し、米国を中心とした世界的な株高が世界景気を牽引しており、保有株の値上がりで余力が生まれた外国人投資家が日本市場に資金を振り向けていることが値上がり要因とも言われています。日銀の政策や富裕層のマネーゲームでの株高ということであれば、多くの国民が好景気を実感できないことも頷けるわけです。

景気回復「いざなぎ」超え

株価の高騰以外にも、先日、2012年12月に始まった景気回復局面が9月で58ヶ月に達し、「いざなぎ景気」を超え、戦後2位の長さになったという統計が発表されました。

景気回復の期間は、専門家の意見を参考に内閣府が判断するのですが、景気動向指数(CI 2010年=100)の基調判断を11ヶ月連続で据え置いたことで、今回でデータとしても裏付けられたことになります。

参考までに、戦後最長の景気回復は2002年1月~2008年2月の73カ月間なのですが、この期間もデフレ基調は続いており、個人的には決して景気が良かったという風には記憶していません。そして、現在進行中の局面では、日本の「稼ぎ方」が構造的に変化していることが多分に影響しているようです。

少し前までは自動車や機械等の輸出が伝統的に国内景気を支えていたのですが、近年では海外企業の買収や外債投資から得られる配当や利子(第1次所得収支)が大幅に増えているのです。具体的には、直近17年8月までの5年間の累計で91兆907億円と戦後最長の回復期に稼いだ黒字(71兆7069億円)を27%も上回っています

「稼ぐ力」が何となく不労所得化している感じですので、余計に好景気が実感できないのかもしれません。今後、2019年10月の消費税率の引き上げ時期までは、この景気回復局面は続くとの見方もありますが、やはり、国民に実感できる好景気とは、雇用者の所得が増加し、個人消費が活性化することであるはずです

度々繰り返しますが、GDPの約6割は個人消費で、個人消費が増えなければGDPは上がらず、GDPが上がらなければ、給料は増えません。今回は現状の景気を示す大きく2つの情報に少し切り込んでみましたが、違和感の要因を少しでもお伝えできたらと思います。

世界はITサービスの普及によるデジタル経済化を急ピッチで進めています。日本もAIや電気自動車(自動運転を含む)等の先端技術に乗り遅れず、真に実感できる好景気の到来を期待したいものです。

 

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