№103-R2.1月号 マイナンバーカードは普及するか?
制度の現状
マイナンバーカードは作成していますか? 2016年1月に交付が開始され、税金や行政手続きで利用が可能になって以来、ちょうど4年が経過しました。
総務省が公表した最新のデータでは、令和元年11月1日時点での交付枚数率(普及率)は14.3%ですので、現状では残念ながら国民に浸透しているとは言い難い結果となっています。参考までに、東京都は19.1%、愛知県は12.4%の交付枚数率です。
私自身も確定申告(e-Tax)で利用するため、事前に郵送されるマイナンバーが記載された「通知カード」を2016年3月にカードへ切り替え申請しました。実際の利用頻度としては、毎年の確定申告以外に住民票や印鑑証明をコンビニで取得する程度ですので、特に便利さを享受しているという印象はありません。普及が進まない理由も、このように「特に作成するメリットがない」という部分が大きいのではないでしょうか。
具体的に現時点の利用価値を見ても、①顔写真付きで身分証明になる → 運転免許証等で代用可能 ②行政手続きが1回で済む(ワンストップサービス) ③コンビニで住民票等が取得できる → 利用頻度がそもそも少ない ④所得税の電子申告が可能 → 税理士に依頼するか税務署で直接申告するなど、然程魅力を感じる内容でもありません。
また、個人情報が不当に取得されてしまうかもしれないという漠然とした不安も不振の大きな要因でしょう。
起死回生の一手?
昨年発表された2020年度予算案では東京五輪後の景気対策の一環として、マイナンバーポイント(マイナポイント)なる制度に2,500億円が組み込まれました。2020年9月から2021年3月までの期間限定で、マイナンバーカードの保有者にポイントを付与するという内容で、現在発表されている範囲では、カード保有者が事前にチャージして支払うキャッシュレス決済手段に金額をチャージすると、その金額に最大25%分のマイナポイントが上乗せされ、買い物等で利用できるという仕組みです。
1ポイント=1円ですので、例えば、Suicaに2万円分チャージすると、ポイントが5千円分付与されるというイメージでしょうか。ポイントは5,000円が上限とされていますが、25%の還元率は確かに魅力的に感じます。
消費税率アップに合わせて始まった「キャッシュレスポイント還元」制度が現状比較的好調ですので、これにあやかってマイナンバーカードを普及させたいところですが、果たして政府の思惑通りの運びとなるかは相当微妙な感じです。半年間という期間が少し短いようにも思えますが、反響次第では延長もあり得ます。景気対策と同時にマイナンバーカード普及の起爆剤になれば、民意と言えないまでも予算増額の大義名分にはなりそうです。
今後の取組み
政府は2023年3月末にほぼ全ての住民がカードを保有する目標を掲げていますが、現状の達成率を見る限りでは50%でさえ困難な様相です。マイナポイント以外の普及策では、2021年3月から事前登録により健康保険証としても利用でき、2022年度中にはほぼ全国の医療機関で対応可能となります。
また、介護サービスを受ける際の利便性を高めるため、その後程なく介護保険証と一体化する案も出ているようです。他にもICチップでの本人認証機能により、証券口座の開設や電子決済等への利用など民間での活用も期待されています。
この先、国家予算が膨らみ続ける中、税や社会保障の公平・公正な環境を維持するためにもマイナンバーカードによる管理が必要なことはある程度受け入れざるを得ないところです。
しかし、普及を確実に進めるためには小手先の撒き餌のような戦略でなく、個人情報の漏えいを防ぐ万全な安全策を講じることで国民の理解を得ることが優先であることは言うまでもありません。達成率が芳しくない場合は、いずれ不保有者への縛りや規制が厳しくなることも予想されます。ひとまず、マイナポイントでどれ程の住民が釣り上げられてしまうのか…、普及率の動向を注視するつもりです。
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