№170-R7.8月号 信用調査会社の基礎知識

信用調査会社とは

事業をしていると、何らかのタイミングで信用調査会社と関わる機会があると思います。中でも民間の信用調査会社として有名なのは、帝国データバンクと東京商工リサーチではないでしょうか。「企業倒産情報の発表」と言えば、誰もがすぐに連想できる2社です。

両社とも独自のデータベースを構築し、信用情報や与信についての評点、スコアなどを算出、提供することを主な業務としています接する機会としては、新たな取引先との商取引における信用状況や主要取引先の現状を把握することで、商品の仕入れや販売代金の未回収リスクを抑えることを目的とするケースが大部分です

信用調査会社が提供する調査レポートで調べられる項目には、企業業績、財務のほか、詳細な与信情報、評点、決済事故その他のニュースなどがあります。業界シェアは、帝国データバンクが約6割、東京商工リサーチが約3割を占め、この2社で9割近いシェアを独占している状況です。

この数字からも帝国データバンクが東京商工リサーチの倍以上のシェアを占めているため、どちらかを選択するのであれば、サンプル数の豊富さで帝国データバンクを推奨します金融機関も、新規開拓や信用補完の分析ツールとして高頻度で調査レポートを利用しますので、スコアの知識はある程度必要です。

スコア(評点)の見方と要点

帝国データバンク(以降TDB)が提供する「調査報告書」の見方についてですが、スコア(評点)として、どの銀行にも借りられるレベルは100点満点で51点以上と言われています一見、かなり低い数字に感じますが、51点以上は全体のわずか15~16%です

一般的に問題がないとされるスコアが、46点~50点で25%程度、最も多い層が41点~45点で全体の3分の1程度の分布になっています。信用要素別評価は、①業歴、②規模、③経営者、④企業活力、⑤資本構成、⑥損益、⑦資金状況に区分され、定量7割、定性面3割でスコアが決まる仕組みです

実際は、倒産確率を数値で示すことがメインの目的なため、⑤~⑦の決算書内容で大方決まりますが、特に⑦の資金繰りに関わる部分は、0~20点と配点の幅を広げています。銀行の債務者区分と異なる点は、定性面(③・④)にも一定の評価を与えていることですしかし、この部分のみでの高得点は期待できず、全体の調整点くらいの位置付けとして捉えるべきでしょう

先述したように、51点以上を獲得するためには③、④がポイントになりますので、調査員のヒアリングの際には、丁寧な対応に加えて社長の経営に対する姿勢や自社の積極的なアピールは重要です東京商工リサーチも同様ですが、定性メッセージについては、業績特記事項、事業内容、会社の特色、最新期の業績、資産現況と調達力、最新の動向と見通しなど、もう少し詳細に記載しています。

会員登録の是非

信用調査会社から「調査報告書」を取得するためには、自社が他社からの依頼を受けたタイミングで調査に協力しなければなりません。調査を受けるということは、ライバル会社や取引先が自社の内容を見にきているということです

前章でお伝えしたようなハイスコアであれば、正確で内容の良い決算書と判断され、取引先から単価の引き下げや値引き要請が入る可能性があります。定性面でも、調査員への対応がいい加減な場合などには、新規の取引先に対して悪い印象を与えてしまう可能性もあるでしょう。

結局、スコアが良くても悪くても、開示することのメリットは少ない気がします特に、小規模企業で一般消費者を相手にする業種であれば、なおさらです。「多店舗展開で他の地域へ進出する際、その地域の金融機関から営業を受けたい」とか、「取引先の状況を定期的に確認しておきたい」などの理由があれば、情報提供と引き換えの意味があるのかもしれません。

以上の理由で、弊社がお客様から「信用調査会社から調査依頼の連絡があったのですが」とご相談があった場合には、基本的に「断っておいてください」とアドバイスさせていただいています自社情報の開示は、予期せぬときに思わぬリスクを招きかねないからです。

 

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