№177-R8.3月号 資金繰り悪化時の選択肢

企業倒産の増加と資金繰り悪化の背景

企業の倒産件数は月間平均800件台と高水準で推移しています。背景には、円安やエネルギー価格の上昇による物価高、人手不足や人件費高騰といった要因に加え、新型コロナウイルス感染症の影響を受けた中小企業や個人事業主を支援するための「ゼロゼロ融資」の返済猶予期間が、2025年に終了する企業が増えていることがあります。

特に観光業や飲食業では打撃が大きく、税金や社会保険料を滞納する事例も目立ちます。複数の支払いが同時に始まれば、資金難に陥るのは避けがたい状況です。「ゼロゼロ融資」は実質無利子・無担保で、当初3年間は利子が免除される仕組みでした。

しかし、例えば、返済期間が10年の場合、返済開始後は残り7年間で元金を返済するため、月々の負担が大きくなります。さらに税金や社会保険料には延滞税・延滞金が課されるため、営業を再開しても資金負担が急増するのが現実であり、経営再建を難しくする要因となっています事業計画の見直しも、値上げや販売強化を積極的に進めなければ、こうしたコストや返済負担を賄える水準に達することは困難です。

ただし、融資返済については金融機関との交渉余地が残されている場合も多くあります資金繰りが何とか回っている状況も含め、早い段階で金融機関へ相談することが最悪の事態を避けるための重要な一歩となります。

リスケジュールは最終手段

前章でお伝えしたような状況に陥ってしまった企業に対して、安易に「リスケジュール(リスケ)」を勧める専門家がいます。ここでの「リスケ」は、金融機関に一時的に元金の返済を(1年以上)猶予してもらうことを指しますが、「リスケ」を検討する前に、まずは売上改善やコスト削減、在庫圧縮や資産売却など、事業の改善余地を最大限探ることが重要です。

また、税金や社会保険料の分納制度を活用し、資金流出の平準化を図ることも有効ですこうした取り組みを行ったうえで、それでも返済が困難な場合に限り、金融機関と真摯に協議し、合理的な再建計画を提示して「リスケ」に臨むべきです。

周知の通り、リスケ」は金融機関の信用評価に大きな影響を与え、追加融資や新規取引が難しくなる可能性が高まりますそのため、不用意に選択すべきものではありません。そもそも「リスケ」に応じてもらう場合は、綿密かつ現実的な利益計画が必要になります。金融機関側は、返済の見込みがない企業に対して、「リスケ」を実行することに何も意味を持たないからです。「リスケ」はあくまで再建のための「最後のカード」であり、事前の準備と将来の見通しが立たなければ、単なる延命策に終わり、より厳しい状況を招くことになりかねません

借り換えと一本化

「リスケ」状態になる前に、返済スケジュールは常に専門家と検討しておくことが重要です。資金繰りが悪化すると、返済のために新たな融資を受けるという負のスパイラルに陥り、口数が増えて返済負担はさらに重くなります。

こうした事態を避けるには、早めに対策を講じる必要がありますが、有効な手段として「借り換え」や「一本化」があります

「借り換え」は、低金利や有利な条件の融資で既存の借入金を返済する方法です例えば、「A銀行の既存融資を、より金利の低いB銀行の融資に借り換える」というようなケースを指します。

「一本化」は複数の借入を1つにまとめ、返済管理を簡素化し、月々の負担を軽くする方法です金融機関によっては「おまとめ」と呼ぶこともあります。実務的には、まずメインバンクに相談し、複数口の融資に追加融資を加えて「一本化」するのが原則ですが、応じてもらえない場合は、サブバンクに相談してみてくださいその際、返済期間を延ばせば毎月の元金返済額は減り資金繰りは改善します

仮に、5口合計5,000万円を月100万円元金返済していた場合、1口6,000万円にまとめ、月50万円の元金返済にすれば負担は大幅に減ります。ただし、返済期間が長くなる分、総金利負担は増える点には注意が必要です。「リスケ」実行に至る前に、「借り換え」や「一本化」を適時検討することで、デフォルトリスクを大きく低減し、経営の安定性を保つことができます。

 

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