№176-R8.2月号 消費税減税の問題点
減税と市場の反応
衆議院議員選挙は自民党の圧勝に終わりましたが、今回多くの政党の公約に掲げられたのが消費税の減税または廃止でした。自民党も同じ与党の日本維新の会が「食料品の消費税を2年間ゼロ」を主張していますので、同主張については「検討を加速する」という曖昧な表現で一応前向きさをアピールしたかたちです。
政治家がここまで消費税にこだわる理由は、国民が特に消費税に敏感であることにあります。平成元年に初めて導入された消費税ですが、当初から所得の低い人ほど収入に対する税負担の割合が大きくなる「逆進性」がネックとなり、税率引き上げの度に政府への反発が高まる性質の税目であることは周知の通りです。しかし、その消費税収も今や25兆円を超え、所得税や法人税を抑えて我が国最高額に達し、歳入の基幹的役割を担うほどになっています。
政府がこの税収を当てにしているのは言うまでもありませんが、自民党が消費税減税を公約にできない理由は、政権与党が「減税」という言葉を発することで(歳出削減が伴わない場合)、世界は日本の政府債務が増加し、財政悪化により持続可能性が危ぶまれると判断するため、長期金利の上昇や為替に影響を及ぼす可能性が高まるからです。実際に足元でも、選挙前から長期金利(新発10年物国債利回り)が27年ぶりに2.2%台の水準で推移しています。
減税の効果と影響
消費税減税を公約にする最大の理由は、近年の物価高騰にあります。「食料品の消費税8%を0%にする」案が実現した場合、4人家族で年間約6万7272円の負担減となり、消費税収は約5兆円の減税で経済効果は5千億円との試算も出ています。経済効果は然程ではありませんが、家計の負担軽減には多少期待できそうです。
国民目線では、5兆円の減税分をどこで補填するかも大いに興味深い点であり、現時点では税収の上振れ分(機動的な財源)、大企業・富裕層への課税強化、政府系ファンドの運用益(円安で潤う外国為替特別会計など)などが候補にあげられています。
いずれも「恒久的な財源」としては不安定で、社会保障費の削減や地方財政などへの影響が避けられません。特に、地方自治体は消費税収に依る部分が大きく、地方交付税と地方消費税で約2兆円の財源失われる公算です。
一方、与党案であれば、「食料品の消費税を2年間ゼロ」となりますが、食料品店のレジ調整や飲食店の顧客減少、テイクアウト増などの問題も含め、期限付きの減税は事業者に少なからず影響を及ぼすことになります。「2年間」の部分について、首相は「食料品消費税ゼロ」を「給付付き税額控除」へのつなぎとする考えを示しており、木原官房長も「その時の景気状況や物価、ファンダメンタルズに応じて、その後の消費税の在り方は考える」と記者団に説明しています。
物価高対策としての減税
前述の通り、消費税減税に期待する本質的な部分は物価高対策にあります。ここ数年の消費者物価指数(生鮮食料品を除く)対前年比(≒インフレ率)が3%程度で推移していることを考えると、3年程度同水準が継続した場合には食料品の消費税率8%を超えてしまうかもしれません。
仮に期限付きの減税を実施したのであれば、2年後には物価上昇に加えて消費税率が加算されることになり、国民の不満は最高潮に達するでしょう。「消費税=悪税」という認識が民意に浸透してしまっていますが、公助という側面では今後増え続ける社会保障費に不可欠な財源です。
個人的には、消費減税なき物価高対策一択であり、時限的な消費税減税は物価高対策にならないと考えます。コロナ禍で全国民に特別定額給付金が配られた際、多くの人がその資金を生活費に回すよりも貯蓄として残していたというデータもあり、消費税減税が景気全体を押し上げる「起爆剤」にはなりにくく、効果は限定的です。物価高への根本的な解決策は、為替対応やエネルギー政策、国内の供給力強化など、構造的な課題へのアプローチを優先させることであり、消費税減税に真っ先に活路を見出すのは見当違いな気がします。
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