№179-R8.5月号 融資基準の変化
事業性評価融資
事業性融資推進法(事業性融資の推進等に関する法律)が、今月25日に施行され、「企業価値担保権」の導入により、企業の実力や将来性、無形資産を含む事業全体を担保にした融資が可能となります。
「事業性評価融資」自体は、必ずしも「企業価値担保権」を前提とするものではなく、これまでのように決算書や担保・個人保証に頼らず、企業の事業内容、成長性、技術力、経営者の資質(定性面)を総合的に評価して行う融資です。
「事業性評価」という考え方は、10年以上前の2014年9月から金融庁が『金融モニタリング基本方針』を公表し、資産査定中心の健全性評価から「事業性評価」へと軸足を移す方針として明確に打ちだしてきました。
しかしながら、現実の融資実務においては、依然として業績や財務指標が重視される傾向が強く、業績が芳しくない企業に対しては融資が見送られるケースが多く見られます。「事業性評価」による判断を求めても、「努力義務にとどまる」として十分に反映されない場面も少なくありません。
また、「事業性評価」に近い概念として「定性評価」がありますが、中小企業にとって比較的身近な信用金庫においても、その評価割合は限定的であり、メガバンクでは大口取引先を中心に実施されるにすぎないのが実情です。
評価の主な分析対象
「事業性評価」においては、「企業が将来にわたって安定的に成長できるか」を総合的に判断します。非財務面の分析が重視されますが、財務面(収益性や資金繰りの安定性)による分析が軽視されるわけではありません。
主な項目は、①経営戦略・ビジョン:将来的な目標設定と具体的な実現プロセス、②商流:販売・仕入の流れ、取引先の安定性、ビジネスモデルの強さ、③SWOT:企業の強み・弱み・機会・脅威の理解と整理、④業界・競合状況:差別化の余地、他社との比較優位性、⑤市場動向:参入市場の拡大性や将来性、トレンド変化への対応、⑥成長性や独自性:技術力、商品力、サービスの差別化、ブランド力、社会的価値、⑦経営者の資質や経験:リーダーシップ、積極性、誠実性、意思決定能力 です。
その他、顧客や地域社会との関係性や評判、抱えている課題とその改善への取り組み姿勢なども考慮されます。何より、経営者が健康で明朗快活であることも重要です。しかし、融資のチャンスが広がる一方で、多面的なアピールが求められる点では、定量評価と比べてかえって面倒な印象を受けるかもしれません。小規模企業には、企業理念や明確なミッションがないことも間々あります。捉え方によっては、自社の非財務面に目を向ける良い機会と言えます。
変化への準備と対策
今後の「事業性評価」で高い評価を得るためには、定性的な強みをできる限り可視化しておく必要があります。形式的には、会社の沿革、組織図、経営計画書、主要取引先一覧表、ビジネスモデルなどの書類を事前に作成しておくことが有効です。
特に、企業理念は存在意義であり、事業活動を通じて大切にする価値観を明確にする判断基準になるため、必ず決めることをお勧めします。また、経産省が提供する「ローカルベンチマーク」は、「商流・業務フロー」や「4つの視点」で非財務面を明示できるため、財務面の「6つの指標」による評価と併せて、確実に「事業性評価」を有利にするツールです。
今後は、予め金融機関から「事業性評価シート」等への記載を求めれる可能性もあります。「事業性評価」がこれまでの利益や資金繰りを重視した「定量評価」と最も異なる部分は、将来を重視していることです。
つまり、今までの黒字経営をこの先も再現し続けられるかであり、赤字であれば、どのように改善し、黒字経営に転換するストーリーを描いているかになります。金融機関も企業の将来性や成長のポテンシャルを見抜く能力が一層求められることになりますが、「事業性評価」についてもAIに判定させる仕組みが導入されるかもしれません。
今年に入ってから、多くの金融機関で「事業性評価」への動きが加速したように感じられます。早い段階での対策が、今後の融資や金利変動に優位に働くはずです。
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